汚染水を廃棄したい日本の、最悪の事態を恐れる漁師たち

福島第一原発の原子力災害によって生じた汚染水については、専門家がこれまで公表していたよりも放射能が強いものでした。それで、それを安全なものとして処理すると請け負ってきた政府の立場に対する疑問の声が上がっています。

By Motoko Rich and Makiko Inoue

Dec. 23, 2019『ニューヨークタイムズ』

(翻訳 神学博士 川上直哉)

2011年3月に北日本を襲った激烈な地震と津波は、福島県の沿岸都市に住む漁師ニイツマ・タツオさんから多くを奪いました。

津波はニイツマさんの漁船を破壊し、その家を粉砕しました。そして、実に恐ろしいことに、ニイツマさんにとって何より大切な娘さんの命を奪ったのでした。

その大災害から9年近くたった今、77歳になったニイツマさんは、その生業全体を失う危機にさらされています。津波によって破壊された原子力発電プラントから出る汚染水を、日本政府が海洋に放出しようとしているからです。

安倍晋三首相とその内閣、そして東京電力株式会社(チェルノブイリ以来最悪の原発事故へと至った三つのメルトダウンの現場となった福島第一原子力発電所の管理運営責任主体)は、100万トンに及ぶ汚染水をどうするか、決定しなければならない立場にあります。その汚染水は、原発が設置されていた場所に建設されている1000基に及ぶ巨大タンクに貯蔵されているのです。

去る月曜日(2019年12月23日)、日本の経済産業大臣は、その汚染水を段階的に太平洋に放出することを提案しました。大臣によると、海への放出は「安定的に希釈させ攪拌する」ようにコントロールする、というのです。「タンクの中に汚染水を保管し続ける方法」や「地中深くに注入する方法」を、同大臣は選択肢として排除したのでした。これを受けて、安倍内閣が最終決定をすることになります。

汚染水が発生するメカニズムは以下の通りです。まず、溶けた核燃料があります。それはあまりにも温度が高く、また放射能が強すぎるために、取り出すことができません。それで、その核燃料が収まっている原子炉を冷やすために、水が注入され、そして汚染水が生まれるのです。何年もの間、TEPCOという略称で知られている当該の電力会社は「処理された水は海洋に放出しても安全である」と言っていました。汚染水は強力なろ過装置によってそのほとんどの放射性物質を取り除くことができるというのです。

しかし、専門家が公表していたものよりも、実際の放射能は強いものでした。政府当局によると、処理された汚染水は再び処理され、そして放出に足る安全性を確保することになるというのです。

政府がどんな保証をしようと、汚染水が海へと排出された場合、ニイツマさんのような漁師が数百人単位で漁業をほぼ完全に破壊されることになるでしょう。消費者はすでに福島の魚について心配を募らせているのです。汚染水を海洋投棄すれば、人々の恐怖ははるかに深刻化することでしょう。

「そんなことをすれば、漁業という産業は殺され、漁船の命運は尽きてしまう」とニイツマさんは言います。「魚はもう、売れなくなる」と。


翌年夏のオリンピック期間中に野球の会場を提供するのが福島県です。そして、汚染水タンクが建てられている土地がいっぱいになってきています。そうしたことから、汚染水処理の議論は緊迫の度合いを強めているのです。

The Fukushima Daiichi Power Plant.Credit…Ko Sasaki for The New York Times

昨年まで、TEPCOは次のように示唆していました――「汚染水のほぼすべてについて、ただ一つだけの放射性物質を除いて、すでに放射性物質は取り除かれ、日本政府の示す安全基準を満たしている。残りのただ一つの放射性物質とはトリチウムであり、それは水素の同位体で会って、専門家によればそれは人間の健康に比較的低いリスクがあるだけのものだ」と。

しかしそのTEPCOが、昨年夏、「汚染水のおよそ五分の一だけが、十分に処理されたに過ぎない」と認めたのです。

先月、経済産業大臣は、福島の汚染水について、記者と外交官にブリーフィングを行いました。それによると、汚染水の75パーセントについては、いまだなお、トリチウム以外の放射性物質を含んでいるとのことです。そして、その汚染状況は、人体に影響がある水準として政府が想定しているレベルを超えるものである、とのことでした。

専門家の説明によると、最初の数年の間に原子炉に流入した水について、TEPCOが除染装置のフィルターを十分な回数で交換しなかったのだそうです。そのTEPCOによると、再度ろ過の作業をして、大部分の放射性核種を除去する処理を行い、汚染水をきれいにして太平洋に放出するそうです。

Fish being prepared for screening for radioactivity at a lab inside a fish market in Iwaki.

魚はいわき市の市場において検査のための処理を施される

Credit…Ko Sasaki for The New York Times

専門家の一部と、そして現地に住む人々は、そのようなTEPCOの言葉を信用することは難しいと言っています。

「日本政府とTEPCOは事実を隠していると思います。あの水は、やはり、汚染されているのでしょう。」と、いわき市の市議会議員であるサトウ・カズヨシさんは言います。

「来年は東京オリンピックがありますからね。安倍晋三首相は、すべてが“アンダー・コントロール”だ、というイメージを提示したいのでしょう」と、サトウ市議は語ります。彼が想起しているのは、東京が2020年のオリンピック大会のホスト国となった時に日本の指導者がスピーチで語った言葉でした。

情報を一般に周知させることは簡単ではありません。このことを電力会社は認めています。汚染水の処理についての情報は「分かり易い仕方で提示されてきませんでした」と、TEPCO広報のタカノリ・リュウノスケさんは言います。

福島第一廃炉推進カンパニーの事務局長であるマツモト・ジュンイチ氏は、排出するには安全基準を超えてしまっている汚染水について、「それがタンクの中に納まっている限り、何か問題になるとは考えなかったのです」と言いました。

ニイツマさんにとって、漁業は単なる生活のための生業ではありません。それは彼にとって、娘を喪った悲しみに耐えるための大切な仕事なのです。ニイツマさんは言います。「TEPCOと政府の両方が、海をきれいにするべきだと思う」と。

「政府とTEPCOには、現実をしっかり見て、情報を十分に開示してほしい」とニイツマさんは言います。今彼は、彼の2トンの漁船を、一週間に三回しか海に出せていないのです。

ニイツマさんのお連れ合い様は、いつも桟橋で夫を待ちます。最近の朝も、彼女が網を漁船から引き出すと、動き回るタコや跳ね回る数匹のホウボウをバケツの中に放り込み、そのバケツをトラックの荷台に乗せて、市場の倉庫へと運びました。

“Nuclear policy is central government policy,” said Yukiei Matsumoto, the mayor of Nahara.「原子力政策は国策の中心に位置づけられています」と語るマツモト・ユキエイ楢葉町町長Credit…Ko Sasaki for The New York Times

福島にいる漁民の家族について、日本政府が関心を払ってきたとはとても思えないと、ニイツマさんは言います。「汚染水を排出することについて、政府関係者が話し合っていますでしょう。そのこと自体が、つまり、私たちのことを考えていないということなんです」と彼女は言うのです。

「排出される汚染水が安全な水準に何で除染されているかどうか」という問題は「程度問題」なのだと、科学者は言います。

もし汚染水が処理され、低レベルのトリチウムだけが残された状態になったとするならば、太平洋に放出することが「コストと安全性から言って最善の解決策」であるだろう、と九州大学で原子力工学の教授を務めるイデミツ・カズヤ氏は言います。

イデミツ氏はさらに加えてこう言いました。「稼働中の世界中の原発施設においてトリチウム汚染水は海洋へと排出されています」と。

一部の科学者は、福島の汚染水が安全な水準まで処理されたのかどうか確かめるためには証拠が示されなければならないと言っています。

「まず人工放射性核種を除去した後の数値を確かめたいと思います。」と、マサチューセッツ州にあるウッズ・ホール海洋研究所で海洋化学と地球化学の上級科学者を務めているケン・ブッセラー氏は言います。「それからなのです。その処理された汚染水が放出されるべきなのかを巡る議論を検討し、そして、その結果がどうなるのかを検討するのは、本当に、それからなのです。」

Fish being prepared for auction in Iwaki.

市場でのセリを待ついわきの魚

Credit…Ko Sasaki for The New York Times

政府担当者は、この汚染水について、科学的に確認されない程度にしか問題はないのだと主張します。

「汚染水が太平洋に放出されると、水産物の価格が下がるかもしれません。あるいは、消費者が購入したくなくなるかもしれない」と、経済産業省で廃炉と汚染水処理を担当しているオクダ・シュウジ氏は言います。「それで、処理された汚染水が危険であるという科学的根拠はないのですが、その海洋放出について、私たちは心配をしているのです。」

2011年の原子力災害の後、現在でもまだ20か国以上で、日本の海産物と農作物の輸入制限を行っています。今年のはじめ、EUはその規制を一部撤廃しました。

福島の海産物は、震災前の15パーセントだけが市場に出ています。そのひと網毎に、サンプリングがされて、福島県庁と漁協によってスクリーニング検査が行われています。

漁協によると、珍しい種類のガンギエイを除くすべての魚種について、日本政府は最近、販売を禁止していないそうです。

漁協の支所長であるサワダ・タダアキ氏は「もし汚染水が排出されたら、政府が請け負う安全性について、市場関係者はおよそ信じなくなるだろう」と言いました。

Mr. Niitsuma on his boat.Credit…Ko Sasaki for The New York Times

ニイツマさんの漁船

「ほとんどの人は、放射能について、細かいことまで十分に理解しないままで過ごすことができます」とサワダさんは言います。「みんなこう言うのです。『だって、どうせ十分に分からないんだもの。福島の魚は買わないよ』と」。

福島県内では、数千人がもう戻ることができない避難生活を送っています。港に戻れた人びとは、いつまでも消えない疑いを胸に抱いています。

「頭の隅で、いつも迷うんです。ここは安全なのかどうかって」と65歳になるナガヤマ・ケイコさんは言いました。彼女の目は楢葉町にある海産物保冷庫を見つめていました。楢葉町は福島原発事故現場から12マイル(約20Km)圏内にあります。

日本政府は非難指示を2015年に解除しました。いわき産のカレイやヒラメ、そしてサンマは店頭に並ぶようになりました。しかし、ナガヤマさんは、いわきよりはるかに北に位置している北海道産のものを選びました。

楢葉町のマツモト・ユキエイ町長は、原発から汚染水を放出することについて意見を求められた際、答えることを拒否しました。

「原子力行政は国策の中心にあるものです」とマツモト町長は言います。「汚染水はそちらの管轄でしょう。」

日本政府は福島にあるいくつかの町の人々に帰還するように強く促しています。楢葉町はそうした町のひとつです。

そうした中で、3,877人だけが帰還しました。それは元の人口の半分程度です。東京の政府は新しい学校や新しいショッピングセンター、そして新しい運動場を整備するために40億円(3,700万米ドル)を助成しました。

先日の午後、ほんの少しの人々がジムを使用していました。25mのプールがその総合運動場に整備されていましたが、泳いでいたのはたった一人でした。

地元のアーティストであるカナムラ・ユカリさんは壁や窓に絵画を描くために雇われていました。彼女の夫であるユウキさんと二人の幼い子供たちだけが、広いプレイルームにいた、ただ一つの家族でした。

ナカムラさんは、福島産とされた鮮魚のラベルを見ると躊躇すると言います。「この魚を拒否することに、私の心は痛みます。この魚を人に勧めることができません。そのことに、心が痛むのです」と彼女は言い、涙を流しました。「漁師さんたちがこれを獲ってきてくれました。その人たちを傷つけたくはない。でも。とても複雑な思いがします。」

筆者であるモトコ・リッチはニューヨークタイムズ日本支局の責任者である。高騰時の不動産、恐慌時の経済、書籍、教育等、広い分野をカバーしている。… Continue reading

汚染水を廃棄したい日本の、最悪の事態を恐れる漁師たち

福島第一原発の原子力災害によって生じた汚染水については、専門家がこれまで公表していたよりも放射能が強いものでした。それで、それを安全なものとして処理すると請け負ってきた政府の立場に対する疑問の声が上がっています。

By Motoko Rich and Makiko Inoue

Dec. 23, 2019『ニューヨークタイムズ』

(翻訳 神学博士 川上直哉)

2011年3月に北日本を襲った激烈な地震と津波は、福島県の沿岸都市に住む漁師ニイツマ・タツオさんから多くを奪いました。

津波はニイツマさんの漁船を破壊し、その家を粉砕しました。そして、実に恐ろしいことに、ニイツマさんにとって何より大切な娘さんの命を奪ったのでした。

その大災害から9年近くたった今、77歳になったニイツマさんは、その生業全体を失う危機にさらされています。津波によって破壊された原子力発電プラントから出る汚染水を、日本政府が海洋に放出しようとしているからです。

安倍晋三首相とその内閣、そして東京電力株式会社(チェルノブイリ以来最悪の原発事故へと至った三つのメルトダウンの現場となった福島第一原子力発電所の管理運営責任主体)は、100万トンに及ぶ汚染水をどうするか、決定しなければならない立場にあります。その汚染水は、原発が設置されていた場所に建設されている1000基に及ぶ巨大タンクに貯蔵されているのです。

去る月曜日(2019年12月23日)、日本の経済産業大臣は、その汚染水を段階的に太平洋に放出することを提案しました。大臣によると、海への放出は「安定的に希釈させ攪拌する」ようにコントロールする、というのです。「タンクの中に汚染水を保管し続ける方法」や「地中深くに注入する方法」を、同大臣は選択肢として排除したのでした。これを受けて、安倍内閣が最終決定をすることになります。

汚染水が発生するメカニズムは以下の通りです。まず、溶けた核燃料があります。それはあまりにも温度が高く、また放射能が強すぎるために、取り出すことができません。それで、その核燃料が収まっている原子炉を冷やすために、水が注入され、そして汚染水が生まれるのです。何年もの間、TEPCOという略称で知られている当該の電力会社は「処理された水は海洋に放出しても安全である」と言っていました。汚染水は強力なろ過装置によってそのほとんどの放射性物質を取り除くことができるというのです。

しかし、専門家が公表していたものよりも、実際の放射能は強いものでした。政府当局によると、処理された汚染水は再び処理され、そして放出に足る安全性を確保することになるというのです。

政府がどんな保証をしようと、汚染水が海へと排出された場合、ニイツマさんのような漁師が数百人単位で漁業をほぼ完全に破壊されることになるでしょう。消費者はすでに福島の魚について心配を募らせているのです。汚染水を海洋投棄すれば、人々の恐怖ははるかに深刻化することでしょう。

「そんなことをすれば、漁業という産業は殺され、漁船の命運は尽きてしまう」とニイツマさんは言います。「魚はもう、売れなくなる」と。


翌年夏のオリンピック期間中に野球の会場を提供するのが福島県です。そして、汚染水タンクが建てられている土地がいっぱいになってきています。そうしたことから、汚染水処理の議論は緊迫の度合いを強めているのです。

昨年まで、TEPCOは次のように示唆していました――「汚染水のほぼすべてについて、ただ一つだけの放射性物質を除いて、すでに放射性物質は取り除かれ、日本政府の示す安全基準を満たしている。残りのただ一つの放射性物質とはトリチウムであり、それは水素の同位体で会って、専門家によればそれは人間の健康に比較的低いリスクがあるだけのものだ」と。

しかしそのTEPCOが、昨年夏、「汚染水のおよそ五分の一だけが、十分に処理されたに過ぎない」と認めたのです。

先月、経済産業大臣は、福島の汚染水について、記者と外交官にブリーフィングを行いました。それによると、汚染水の75パーセントについては、いまだなお、トリチウム以外の放射性物質を含んでいるとのことです。そして、その汚染状況は、人体に影響がある水準として政府が想定しているレベルを超えるものである、とのことでした。

専門家の説明によると、最初の数年の間に原子炉に流入した水について、TEPCOが除染装置のフィルターを十分な回数で交換しなかったのだそうです。そのTEPCOによると、再度ろ過の作業をして、大部分の放射性核種を除去する処理を行い、汚染水をきれいにして太平洋に放出するそうです。… Continue reading

気候変動の時代における原子力の空手形

By Robert Jay Lifton, Naomi Oreskes, 2019年8月20日

(『ボストン・グローブ』と『核化学時報』からの再掲)

翻訳 神学博士 川上直哉

グリーンピースが世界銀行へ派遣したコメンテーターたちは、「気候変動は私たちの惑星の文明と生命を脅かす緊急事態であるか?」という質問に「そうだ」と答えています。気候変動に対して、どんな解決策が採られるかはわかりません。しかしその解決策を講ずる際には必ず、「化石燃料の段階的な廃止による温暖化ガスの制御」を実現して「代替的エネルギーへの転換」を実現し、そして同時に「人類という種が地球上で活動するために必要とされるエネルギーを供給し続けること」が実現されなければなりません。

この冷厳な現実を直視した結果、著名な人々の中から、原子力エネルギーを再び採用しようと考える人が出てきました。その人たちは、原子力エネルギーを「きれいで、効率的で、経済的で、安全である」と確言しています。しかし実際には、これらのどれも真実ではありません。原子力エネルギーは高価であり、私たちの心身への脅威となり、健康に重大な危険をもたらすのです。たとえば、米国エネルギー情報局によると、平均的な原子力発電コストは「1メガワット時あたり約100ドル」とされています。これを、他の発電方法と比較してみましょう。太陽光発電では「1メガワット時あたり50ドル」です。陸上風力発電では「1メガワット時あたり30ドルから40ドル」なのです。金融グループのラザードは最近次のように発表しました。「再生可能エネルギーのコストは“従来の発電(つまり化石燃料)”の限界コスト以下である」。これはつまり、再生可能エネルギーのコストは原子力よりもはるかに低い、ということなのです。

「理論的」には、これらの高コストと長い建設時間は削減できるとされます。しかし、半世紀以上かけて検証してみたところ、その「理論」は完全に論駁されてしまいました。他のほとんどすべての技術とは異なって、原子力のコストは、時間の経過と共に上昇したのです。原発の支持者でさえ、今や「自由市場環境下では原発の市場競争力はまったくない」ことを理解しています。原発を批判的に見ている人たちに至っては「原子力産業は“負の学習曲線”をたどっている」とまで指摘しているのです。OECDの原子力機関(NEA)と国際エネルギー機関(INEA)の両方が、次のように結論を出しました。つまり、「原子力が“低炭素のベースロード電源であることが実証されている”としても、気候とエネルギーの絡まりあった諸問題への回答として原子力を活用することは簡単ではない。コスト・安全性・核廃棄物処理についての深刻な懸念が存在しているからだ。産業界側はその懸念に対処する必要にせまられることだろう。」という結論を公にしたのでした。

更に、無視できないより深い問題があります。放射能の恐怖と、それがもたらす現実と向き合わなければならないという問題です。これは「目に見えない汚染」と呼ばれる問題です。この「見えない汚染」という言葉で、ある種の毒物が体内にたまっているということが意味されています。原子力災害の影響を受けていないように思われる人にも、どんな時でも、人はこの「見えない汚染」に苦しめられていきます。この「見えない汚染」の恐怖は、非合理なものではありません。というのは、放射線の影響は時間をおいて現れるのですから。さらに、壊滅的な核事故のことを考えなければなりません。それはまれにしか起こらないものです。しかしそれは、ひとたび起これば、上述の物理的および心理的結果を大規模にもたらすことになるのです。完璧な技術システムはありません。そして原子力関連の技術が持つ脆弱性は特別に大きいのです。設計を改善しても、致命的なメルトダウンの可能性を排除することはできません。こうした危機は、天災によっても生じ得ます。地震、火山、津波などの地球物理学的出来事(福島の事故を引き起こしたものなど)があり得るのです。技術的な錯誤や、どうしても起こる人為的ミスから大事故が引き起こされることもあります。気候変動それ自体が、原子力と折り合いが悪いものです。たとえば深刻な干ばつが起きていますが、そのような気候変動によって原発周辺の水温が非常に高くなれば、原発にとって決定的に重要な冷却機能が維持できなくなり、原子炉のシャットダウンに至ることでしょう。

原子力エネルギーの支持者は、福島とチェルノブイリの壊滅的な事故について、いつも常に過小評価しています。原子力エネルギーの支持者は、これら2つの災害で即死した人数が比較的少なく記録されていることを指摘します。それその通りなのです。しかし、そこから医学的に予測される数値については、まったく適切に考慮されていないのです。災害の混乱があり、専門家による極端に誤った操作がありましたので、二つの原子力過酷事故から予測される様々な推定値に、大きな不均衡が生じてしまいました。しかしそれでも、チェルノブイリ関連のプロジェクトによって得られた情報に基づくならば、数万から50万人にも及ぶ将来の癌死が予測されたのでした。

チェルノブイリと福島の研究では「目に見えない汚染」による恐怖が心の自由を奪うということも明らかになりました。この恐怖は広島と長崎を飲み込み、福島の人々の経験と被爆都市の人々の経験とを、痛ましくも接続してしまいました。身体的また心理的に安定しているとは、とても言いがたい。それが福島の人々の現状です。同じ恐怖がチェルノブイリを苦しめています。チェルノブイリでは、多くの人々が強制的に移動させられました。チェルノブイリ周辺の地域は今も、放射能によりその全体が汚染され、住むことができないままなのです。

実際の放射線障害と、放射能が引き起こす不安な予感の組み合わせ――つまりそれが「目に見えない汚染」の恐怖です。それは原子力技術が使用されている場所ではどこでも起こるのです。原子爆弾や大事故の現場だけでなく、ワシントン州ハンフォードでも起こります。そこには長崎型原子爆弾の廃棄物が保管されているのですから。コロラド州ロッキーフラットでも起こります。そこでは数十年にわたって核兵器製造工場があったのですから。ネバダ州その他の核実験場所でも起こります。核実験に伴い、そこで兵士たちが被ばくしたのですから。

原子炉はまた、核廃棄物の問題を引き起こします。半世紀にも及ぶ科学的および工学的努力にもかかわらず、適切な解決策が見つからなかったのです。原子炉がもう維持できないと判断され、核施設が閉鎖された、その後でも、そこに蓄積された廃棄物は危険なままであり、実際のところ、不滅なのです。プリマスのピルグリム原子炉でも、最近同様のことが明らかにされました。バーモントヤンキーでも、経済的な理由で核施設が閉鎖されたのですが、その後に同じ問題が残されました。1982年に放射性廃棄物政策法が施行され、米国政府は全核廃棄物の恒久的な貯蔵所を開発しなければならなくなりました。しかしそれから40年近くたった今でも、まだその貯蔵庫は不足したままなのです。

最後に、最も重大な危険性があります。原子炉から取り出されるプルトニウムと濃縮ウランは、核兵器製造のためにも使用可能なものとなります。ウランを商業用原子炉用に濃縮するために必要とされる技術は、そのまま、ウランを核兵器用に濃縮する技術へと、簡単に移転できるのです。商業用のウラン原子炉が作動すると、燃料の核分裂によりプルトニウムが生成され、最終的に高レベル放射性廃棄物が生み出されます。原子力が大規模に使用されるとき、常にそこには、兵器化への可能性が開かれるのです。当然ながら、原子炉はテロリストにとって潜在的な標的になります。それは潜在的兵器でもあるのですから。

現在450以上の原子炉が世界中にあります。緊急事態に対処する技術をもって原子力を考えてみましょう。そうすると、核危険地帯の地球規模の連鎖がそこに見えてきます。その危険性は、惑星規模での消滅のリスクを秘めたレベルのものです。そうしたことを考えるとき、原子力開発への恐れを持つことは、実に合理的なものとなります。不合理なのはむしろ、こうした懸念を締め出すことです。実に「半世紀以上の経験を経て“第4世代”の原子力がすべてを変える」と主張することこそ、不合理なのです。

原子力の支持者は、しばしば核エネルギーを、炭素を多く含む石炭エネルギーと比較します。しかし、石炭は問題ではありません。すでに世界の舞台から、石炭は脱落しつつあるからです。適切な比較をするとすれば、それは原子力エネルギーと再生可能エネルギーの間で検討されるべきです。再生可能エネルギーは、経済革命とエネルギー革命の一部となっています。ほとんどの専門家が予測したよりもはるかに迅速に、広範囲に、そして安価に、再生可能エネルギーは利用可能になりました。また、一般市民からも高く評価され受容されています。必要とされる規模で再生可能エネルギーが使用されるためには、エネルギー貯蔵・グリッド統合・家電のスマート化・電気自動車用充電インフラの整備に改善が加えられなければなりません。今、全面的な国民的努力が求められています。第二次世界大戦のときのような規模の努力です。あるいは皮肉なことに、原爆製造の時のような国家規模での努力です。再生可能エネルギーがすべての領域を覆い、「アメリカン・ウェイ・オブ・ライフ」を統合するところまで、努力を続けなければなりません。ガスと原子力は、そのために過渡的な役割を果たすでしょう。しかし、私たちの心身に永続的に影響してその機能を低下させ、その深刻な脅威となる、そんな技術のために私たちの惑星の将来を賭けることは、実際的ではありません。

とりわけ、私たちは「核の神秘」から自分自身を解放する必要があります。「核の神秘」とは、放射線が纏う魔法のオーラで、マリー・キュリーの時代から私たちを魅了し続けてきました。「平和のための原子力」という言葉が示すビジョンを、疑ってかからなければなりません。そのビジョンは、核兵器を普通のものと思わせる詐術にいつも伴ってきたものです。究極の破壊のために設計された技術が、究極の生活向上のための手段に一変する――そんな誤った希望が流布しています。私たちはそこから自らを引きはがさなければならないのです。… Continue reading

子ども達への放射能リスクにカリフォルニアの人々が目覚めるのはいつか?

松村昭雄

(翻訳 川上直哉)

3月7日のインタープレスサービスは「8年後のフクシマ:高まる子ども達へのリスク」という私の記事を発表しました。この記事は、その週で2番目の評価を得ました。高評価を得て、私はほっとしています。お読みくださった多くの方々は「事故現場から炉心を除去するだけでも40年はかかる」と知って、驚いているようです。

ここで、故ハンス‐ピーター・ダー博士(ドイツのマックス・プランク研究所元所長)との会話を思い出します。それは2011年の3月にフクシマ事故が起きた時の会話でした。ハンス‐ピーター博士は私に電話で「フクシマ事故は日本政府や、TEPCOが公に発表したよりはるかに状況が悪く、この緊急事態について首相に話した方が良い」と示唆されたのでした。そこで私が博士にフクシマ事故の解決にどれくらいかかるか聞くと、博士は「少なくとも40年はかかるだろう」と答えたのです。

解決するのにそんなに長いことかかる人災が、どんな影響を残すのか。その答えは、私には衝撃的なものとなりました。例えば、第2次世界大戦で完全に壊滅状態となった東京はどうでしょう。その東京は、壊滅の後20年で1964年オリンピックを招致しました。他方で、1986年のチェルノブイリ事故で影響を受けた広大な地域はどうでしょうか。その地域は、33年後の今も不毛の土地のままです。おそらく更に数十年もしくは数世紀にわたり、その状態は変わらないのでしょう。第1次及び第2次世界大戦はたくさんの都市を破壊しました。しかし、その時破壊された都市でも、20年以内には再建されまたのです。つまり、核戦争に至らなかった世界大戦によって破壊された場合、その破壊された環境そのものは比較的健全に保たれていたのですが、原子力による放射能の影響を受けた場合、その場所の一部或いは全部が、数世紀もの間、居住不能な状態となる、という違いが、ここにはっきり見て取れるのです。

原子力施設の「管理された」環境内で、使用済み核燃料棒は10万年間安全な場所に保管されなければなりません。また、世界中から産出される25万トンの放射性廃棄物は数千年間にわたりあらゆる生命を危険に晒し続けるでしょう。人類が地球上に生存する時間をも越えて行くほどの長い期間が、ここで問題になっています。そんな課題と向き合ったのは、初めてのことです。この新しい発見を、私と私の読者の多くの方が共有したのでした。

フクシマの原子力事故に関連するいくつかの事実に基づいて、私は、太平洋の海洋生物への放射能被害と、それに伴う福島の子ども達・北アメリカの子ども達への健康リスクについて、次のような懸念を抱いています。          1

1.放射性炉心の除去に少なくとも40年(私の核科学者の仲間達は60年から80年とも言っています)かかる。今のところ、誰も放射性炉心の正確な場所は解っていない。従って、それをどうして取り除いたら良いか解っていない。また、その正確な場所が解って、取り除く方法と封じ込める方法が決まったとしても、それを実行するのにどれくらい長くかかるのか、解らない。

2.遠隔操作ロボットによって計測された最新のデータによると、2号原子炉の放射能数値は毎時530Svで、2011年3月のメルトダウン以来最高値であった。放射能を帯びた風は毎日北アメリカに向かって流れている。福島のすべての放射能が封じ込められるまで、それは続く。

3.110万トンの極めて高い放射能汚染水が、1000に及ぶ保管タンクの中にある。これらのタンクは緊急事態に対応して建てられたものであり、従ってそれに40年間の耐久性は期待できない。

  • 福島のその地域に更にタンクを建てるスペースはない。早かれ遅かれ、太平洋に汚染水を放出することになる。
  • 信頼できる幾つかの調査によると、日本政府の最善の努力にも拘らず、放射脳汚染水のすべてを保管タンクに取り込むことが実際は不可能なため、何十万リットルにも呼ぶ汚染水が毎日太平洋に漏れ出ているという。
  • 強い地震又は富士山の噴火が、近い将来、予測されている。3つの損傷した原子炉について言えば、地震等の強い衝撃に耐えられるかどうか、かなり疑わしい。もし3つ損傷している炉心の内の1つでも崩壊した場合、どうなるか。あるいは、各々の原子炉の炉心が地震の圧力に晒されさらなる衝撃を受けたら、どうなるか。その時は、現在の危機に重なる形で、極めて最悪の事態が引き起こされるであろう。

科学者の誰も、上記の事実に異議を唱えていません。それで、私は以下のような懸念を覚えています。

  • 広範に広がるフクシマ周辺の地域や、北アメリカの西海岸には、小さな子どもたちや子どもを生む年齢の女性がいる。その一人一人に、放射能環境汚染が脅威を与えている。そのリスクは衰えていない。
  • 福島原子力発電所に隣接した海は、絶え間なく放射能によって汚染されている。魚をはじめとする海洋生物は、放射性核種を益々摂取している。従って、太平洋に接するすべて国々は、長期に渡る水産物の汚染のリスクを増大している。

元京都大学の小出裕章博士は大変尊敬される原子力を専門とする科学者です。彼によると、日本は元来、法定被爆許容量を「一般人は年間1ミリSv / 原子力研究者は年間20ミリSv」と設定していたそうです。しかしながら、福島核事故以来、日本政府は公式に原子力緊急事態宣言(RP1)を発表して、関連する法律を無効にしました。避難者は今、核事故前の法定許容限度より20倍も高い放射能被爆が予想される場所に戻されようとしています。このことについて、ある国連の特別調査委員が非難していました。

小出裕章氏(元 京都大学原子炉実験所助教)は、原子力の専門家であり、大変尊敬されている科学
者です。彼によると、日本は元来、法定被爆許容量を「一般人は年間1ミリSv / 原子力研究者は
年間20ミリSv」と設定していたそうです。しかしながら、福島核事故以来、日本政府は公式に原
子力緊急事態宣言(RP1)を発表して、関連する法律を無効にしました。避難者は今、核事故前の
法定許容限度より20倍も高い放射能被爆が予想される場所に戻されようとしています。このこと
について、ある国連の特別調査委員が非難していました。

フランスの大気環境研究センター(CEREA)の放射線シュミレーション地図によると、カリフォルニア州に於ける放射線レベルは、日本の北海道のそれよりも高いようです。その分析は、小出教授の調査とも一致しています。今後40年の間に米国西海岸で追跡する放射能がどんな影響を与えるか、科学者は未だ計算していないことでしょう。短期或いは長期的戦略を計画するためには、現在の状態を分析し、最高の専門知識と財源をつぎ込める国際アセスメントチームが必要です。福島からの放射能は、気流によって運ばれます。その流れはアメリカ西海岸で止まらない事に注意を払わなければなりません。実際これは国家的そして地球的問題なのです。

生命を脅かす状態があります。その解決方法は、今のところまだ社会的合意を得ていません。そうした現状を指摘することは、とても難しいことです。そこには複雑な障害があるのです。まず最初の障害は、意図的な組織的沈黙です。実際のところ、「解決方法も無い以上、それを話す価値は無い。ストレスと不安レベルをあげることはないのだ。」という議論には、もっともらしいところがあるのです。しかし、福島からの8年に及ぶ、衰えることのない汚染水漏れが検証されるならば、放射能レベル計測と予測できる健康被害に関して政府と学級的世界が組織的に沈黙していることは、必ず暴露され、問い直されるはずなのです。

カリフォルニアは現在世界で5番目に大きな経済圏に位置しています。農業、科学、科学技術、メデイア、観光の分野で、主要な地位を占めています。しかしこのカリフォルニアの経済的な力が引き続き発揮されるためには、土地と市民の健康が維持されなければなりません。

カリフォルニアの人々にとって、フクシマをはじめとする様々な場所に起因する絶え間ない放射能汚染の事実を厳しく査定すべき時は、もう終わりました。未来世代にその問題を押しつけてはいけないのです。今、私たちはアメリカの原住民の諺に学ぶべき時だと思うのです。それは、こういう諺です――我らの大地は祖先から受け継いだものではない。それは我らの子ども達から借りているに過ぎないのだ。Continue reading

8年経ってなお、フクシマは日米の子供達に健康被害をもたらしている

松村昭雄

損傷を受けた原子炉で高い放射能レベルが続く

2019年3月11日、フクシマ原発事故から8年を迎えます。外部の観察者にとりこの記念日は技術的進歩報告、新しいロボットの調査、又はそこでの生活がゆっくりと正常な状態に戻っているかについての短いストーリーを提示します。

しかし、日本政府はメルトダウンした敷地周辺の水を汚染し続けている損傷した3つの原子炉内で、放射線にさらされた炉心に触れ、テストする方法を未だ見いだせていません。

政府は放射性物質を動かす方法が解ったとしてもそれをどこに置いたら良いのか解りません。

その間も、政府と敷地のオペレーターは、汚染水を貯蔵する部屋を使い果たしており、汚染水は更に沢山のタンクに増え続けています。一掃するのに40年かかると推定され、費用は1950億ドルと推定されています。

最新の公表された放射線レベルの調査結果は2017年からのものです。その年、東京電力は損傷した原子炉に人が近づく事が出来なくなった為 2号原子炉では、遠隔操作ロボットを使用しなければなりませんでした。2011年3月以来の最高値は1時間あたり530シーベルトを計測しました。それ以来、数値が低くなったという根拠は考えられません。

遠隔操作ロボットは他の原子炉でも同様に使用され、放射能レベルはそこでも同様に高いのです。

たとえ、ロボットを使用しても、ロボットは1,000シーベルトの曝露にしか耐えられず、仕事はほんの短い時間、この場合は2時間以内に限られます。

これは極めて大量の放射線です。東京電力がその数値を発表した後、朝日新聞は次のように報道した。「国立放射線科学研究所の職員が医療専門家達は彼らの仕事でこれほどのレベルの放射線を扱うと考えたことはなかったと述べました。

ジャパンタイムズは 田辺文也博士は原子力安全の専門家ですが、研究結果はそのプラントの実際の廃炉への準備とプロセスは、期待したよりはるかに困難が予想されることを示していると言った と引用しました。

フクシマの子供達は国際的注目を必要としています。

この惨事では沢山の犠牲者がいます。数千名もの人たちは自分の家を移らざるをえませんでした。地元の漁師は政府が汚染水の貯蔵タンクを海に放棄する計画を進めていることを懸念しています。汚染された風の流れと汚染水が北アメリカに到達し、更にこれから

40年間それが続くと心配する人達もいます。

これらの重要な問題の中でも我々の注意を最も必要とするのはフクシマの子供達です。

彼らは最初の被爆にさらされているため、がんのリスクが最も高いのです。

チェルノブイリにおいて、私達が持っている唯一の比較可能な、症例で、

2005年迄の国連によると6,000件を超える小児甲状腺がんの症例が発見されました。

フクシマの子供の甲状腺がんの割合は国全体の割合より高いと実証されました。しかしそれは潜在的な病気です。完全な影響がどのようになるのかを言うことは時期尚早です。しかし、この問題が行動を必要としていることは明らかです。

科学者はいつも、不確実性に左右され異なる意見を出します。しかし、又悲しい事に

政治、お金、野心にも左右されます。実証は誇張されている、過小評価されている と言う人もいれば、確証するには早すぎる段階にあると主張する人もいるでしょう。あるいは

私達は結果を明らかにするには時間が必要だと言う人もいるでしょう。私は国連や国際科学会議でこれらの議論の実例をたくさん見てきました。何故私達は待って同じ過ちを繰り返すのでしょうか?

ヘレンカルデイコット氏は、医者で、1985年にノーベル平和賞を受賞した、より大きな傘のグループの一員であり、社会的責任を負う内科医達を創立した会長ですが、次のように書いています。ほとんどの政治家、実業家、技術者、原子力科学者は放射線生物学と放射線が癌、先天性奇形、そして世代を超えて受け継がれる遺伝病を引き起こす方法への本質的理解がなく、又子供達が大人よりも20倍も放射線感受性が高いこと、女子は男子や胎児より2倍又はそれ以上傷つきやすいということを認めません。

ユニセフはリード出来ます。

私達は気候変動、貧困緩和、安全保障という複雑な課題に直面しています。子供の健康と福祉は常に私達の再優先事項であらねばなりません。彼らは私達の未来であり私達の最も深い目的は彼らを世話し彼らのため準備しなければなりません。充分にフクシマの影響を調べもしないで決定を下すことによって、彼らを見捨ててしまいます。

私達は皆、個人的にはそれに、同意します。しかしどの組織がそのミッションを遂行するのに最適な立場にあるのでしょうか?私にとってユニセフ、国連国際子供緊急基金が唯一の答えです。実に、子供達を国家安全の上に置くことはユニセフの核心です。モーリス

パテは1947年にユニセフの創立の時参加した、アメリカの人道主義者で、実業家で、「ユニセフが人種や、政治に関係なく元敵国の子供達に奉仕すること」を条件に事務局長になることに同意しました。1965年、パテの任期の最後にその組織はノーベル平和賞を受賞しました。

今日まで、そのミッションは最も不利な条件の子供達、つまり、戦争、惨事、極貧、あらゆる種類の暴力、搾取等の犠牲者、身体障害者、の特別保護を保証の公約に含んでいます。

フクシマの子供達はユニセフの保護に該当します。

              フクシマの子供達は国際的注目を必要としています。

日本語訳 佐藤江美 平和活動担当 国際仏教教会 … Continue reading

個人が発揮するリーダシップの隠された意味と力: シリアのグランド・ムフティ・クフタロ師を想起して

松村昭雄

(翻訳 神学博士 川上直哉)

الشيخ أحمد كفتارو.jpg

「シリアに展開している部隊を撤収する」と、トランプ大統領が今週、発表しました。ジョン・ボルトンやブレット・マクガークといった側近の反対を押し切っての決定でした。政治的な問題はさて措くとして、この決定によってシリアで起こっている悲劇への関心が新しく呼び起こされることでしょう。すでにアメリカのニュース番組や情報サイトそして私たちの頭の中でも、「シリア」という言葉がいつも最初に現れるようになっています。

ニュースを見てみますと、子どもたちのことが気になってきます。無理矢理持ち込まれた暴力と恐怖は、子どもたちの中を行き廻り、苦しめています。また、死者のことを思いますと、心が痛みます。今行われている戦争で、50万人にも及ぶ人命が喪われました。そして、何とか生き延びようとしている600万人の難民のことが気がかりです。数百万に及ぶ人々が、国内に居場所を失いつつ、その上で国外に出られない、あるいはそれでも国外には出たくない、という環境に置かれています。難民となってシリア国境線を超えて国外に脱出すると、どうなるのでしょうか。そこには新たな困難が待ち受けています。イラクには内戦があります。クルド人は独立を求めて戦っています。イスラエルとパレスチナの間には、政治的支配と安全保障をめぐる戦いが継続中です――1995年12月にエリコで開催されるはずだった「グローバルフォーラム」のために尽力したラビン首相のことを、これからもずっと、思い出し続けるでしょう。ラビン首相はアラファト議長と共に力を尽くしました。彼の力強い努力は、彼が暗殺されるその時まで続いていたのでした。

シリア危機は、避けられたはずの出来事でした。それは人災と呼ぶべきものです。政治的・宗教的指導者が、シリアにおいて、あるいは世界中で、自らの利益や栄誉を求め、そして今般の危機へと進んだのです。その責任の所在について、今は措いておきましょう。ただ、今私は「人々(people)」ということを強調して考えたいのです。「制度・機構(institution)」ではありません。「人々」が、変革をもたらすのです。「制度・機構」は道具です。それを使うのは「人々」なのです。

実に、個々人こそが、物事を良くして行く可能性を持った最良の主体でもあるのです。それでは今、シリアで起こりつつある内戦に向き合うこの時、「個々人」あるいは「人々」が持つ力が、いったいどんな出来事をもたらすというのでしょうか。

ここで私は、ひとりの人の叡智を思い出します。その人の名はグランド・ムフティ・クフタロといいました。1964年から、その生涯を終える2004年まで、卓越した宗教指導者としてシリアに尽力した人物です。彼の叡智があれば、シリア危機を避けることもできるかもしれない。そのことを確かめることこそできないのですが、私はそう確信しているのです。

ある時、私は、とても繊細な政治的問題について、グランド・ムフティ師と話し合わなければならなくなりました。そのころ、私はしばしば共産国やシリアなどにいる仲間と電話で話し合うことがありましたが、そういう時はいつも、その電話が盗聴されていることを想定しなければなりませんでした。ですから、私はいつも、自分の使う言葉を注意深く選ぶ必要がありました。私の友人に不利益が及ぶことがないように、細心の注意を要したのです。

二日間、私は悩みぬきました。私の胸の内にあるこの議題を、グランド・ムフティ師に伝えたい。その最良の方法はなんだろう。もし私が「あなたを訪問したい」と言ったら、外務省関連の役所で引っかかってしまって、宗教関連の役所との交渉までずいぶん手間取ってしまうだろう。これが私の心配でした。そんなことになれば、ビザの申請から始まって、私が所属している国連の手続き等、様々な事柄に時間を取られることは必至だったのです。

それで、私はこう言う事に決めました。「グランド・ムフティさん、あなたに“会いたい”のですが・・・。」この私の言葉へのグランド・ムフティ師の返答に、私はずいぶん驚かされたものでした。彼はこう答えたのです。「アキオさん、ありがとう。国際会議への私の招待に応じてくださったのですね!」もちろん、そんな国際会議は存在していなかったのです。グランド・ムフティ師は、私の声を聞いてすぐ、状況判断を下し、私の胸の内に秘めていた課題をどう取り扱ったらよいか察知したのでした。彼の叡智を、私は印象深く心に留めました。彼にはそこにあった困難な状況にどう立ち向かたら良いかを見抜く力があったのです。片方には役所が持つ窮屈な硬直性があり、他方には理想を目指す政治が日進月歩で変動する。この二つの間に、いつも課題が生じます。彼には過去の知見を参照し、その問題について理解する力がありました。彼の視野はいつもとても広く、彼はいつも遠くまで見通す人だったのです。

グランド・ムフティ・クフタロ師がアル=アサド大統領と出会っていたら・・・それも、今起こっている問題の、まだ初期の頃、メディアなどで広く知られる形ではなく、二人が出会っていたら――と、考えてしまいます。もしそうしていたら、ムフティ師の叡智は、きっと、状況が制御不能となる以前へと、アル=アサド大統領の思いを向けなおしてくれたのではないか。この推測は、単なる希望的観測を超えたものだと、私はそう確信しているのです。

しかし、今既に、内戦状態となってから7年もの月日が経ってしまいました。私たちの目には、ただ暴力だけが継続し、政治的な解決など何一つないように見えます。米国の指導者たちは、勇気をもって行動を起こすことをせず、面目を保つことも諦め、別の方法を試す努力を放棄しています。難民と移民は、その存在自体が欧州と英国の社会的分断を激化させながら、今も相変わらず不当に取り扱われています。この現実を前に、何とかもっと建設的な見通しを持てないかと、私も苦慮しています。この状況がどんな帰結に至るのか、その全体像を把握することすら、私たちの指導者にはできていない。そんな数年間を私たちは過ごしてきました。そして、この現実はただひたすら悪くなっています。

私たち社会の側が、既存の制度や機構に信頼することは、もう、できないようです。それでも、個々人に希望を託し続けるべきです。ソーシャルメディアは肥え太り、無責任な記事と怒声・罵声にあふれかえっています。もうそこに信頼すべき記事を見出すことすら難しくなってしまいました。しかしそれでも、勇気が発揮される余地を残さなければなりません。シリアに解決をもたらすべく話し合うのは、制度や機構ではなく、個々人なのです。そして、欧州に現れた新しい社会を通して私たちを導くのも、制度や機構ではなく、個々人なのです。

グランド・ムフティ・クフタロ師がいてくれればと、思われてなりません。シリアでも、大切なのは彼のような個人の働きなのです。そのことは、絶対に確かなことなのです。


Continue reading

カリフォルニアの巨大山火事とフクシマ放射能

親愛なる日本の皆様

暑い中ですが、お変わりなくお過ごしでしょうか。

日本政府は昨年、「東京電力福島第一原子力発電所で損傷した三つの原子炉の中に残された核燃料などを取り去るために、最低でもあと40年は必要である」と発表しました。この発表を受けて、私は、40年を経た後の世界へと自分の視野を移し、焦点を絞ることにしました。海洋生物への危険性はどうなるのか。北アメリカ大陸に住む人々の潜在的なリスクはどうなるのか。40年もの間、風に吹かれ、あるいは海流に乗って、フクシマから放射性物質が流出し続ける、その結果はどうなるのか。それを私は考えるようになったのです。

日本には、噴火について科学的に調べている学者がいます。また日本には地震学者が何人もいます。こうした人々に「富士山の噴火が起こる可能性」や「東京で巨大地震が発生する可能性」について、聞いてみてください。そうしたらきっと「それは、この40年以内に、ほとんど間違いなく、それは起こることでしょう」という答えが返ってきます。そうなのです。実際のところ、人間と環境と経済に対する甚大な打撃を引き起こす天災が、ほぼ間違いなく起こるのだ、と分かったとしても、人々はそれを無視してしまうのです。それは遥か未来のことに思えて、考慮に入れることがとても難しくなるからです。実際、そこで向き合うのは「たった40年」先の問題ですが、それでも、それを考えることは難しい。それなのに、放射能被害を巡って、私たちは更に「数千年」先のことまでも考えなければなりません。どうしたら私たちは、遥か長期に及ぶこれらの事柄を、私たち人間の一生涯という短い時間軸に結び付けて考えることができるのでしょうか。

ここに私は、謹んで一編の文書をご紹介いたします。グレッグ・リーン氏がお書きになった「カルフォルニア州巨大山火事とフクシマ放射能」という文書です。リーン氏はカリフォルニア州でタホ湖(カリフォルニア州とネバダ州を隔てる湖)の環境問題と土地利用に関する法律事務を職業としている方です。

私は今後、世界中の知見・領域横断的な専門知を集め、40年間蓄積されるフクシマ由来の放射性物質が一体何をもたらすのか、皆さんにお知らせしたいと思っています。その作業を通して、私はまた、将来世代に圧しかかる負荷を減らすために、いったい私たちに何ができるのか、知りたいと願っているのです。

皆様のご理解とご協力を賜れば幸甚の至りに存じます。

松村昭雄

 

 

カリフォルニアの巨大山火事とフクシマ放射能

――私のパーソナルストーリー――

 

法律家 グレッグ・リーン 著

神学博士 川上直哉 ・ 佐藤江美 訳

2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故の直後、私は放射能計測機を購入した。それはどこでも買えるようなタイプの計測器だった。その小さな機械が、後に巨大なインパクトを与えるものとなる。購入したとき、まさかそんなことになるとは、想像することもできなかった。実際、私はこの計測器によって、目の前に広がっている世界が全く違ってみるようになってしまったのだ。

計測器を購入して以来、私は定期的にカリフォルニアのシエラネヴァダ山中にある我が家の周辺の放射能を測るようになった。特に変わったこともなかった。私の計測は毎分30から50カウントを示していた。完全に安全だった。いや、確かにその時は、そう思ったのだった。

 この春、すべてが全く変わってしまった。「空気清浄機やエアコンのエアーフィルターを調べると、ホットパーテイクル(放射性微粒子)が見つかることがある」という事を、この春私は、ふと思い出したのだ。我が家に2台あるエアクリーナーには、HEPAフィルター(0.3マイクロメートルまでの微粒子をほぼすべて捕集するエアフィルター)が付いていた。私は計測器を取り出し、それを片方のHEPAフィルターの前に置いてみた。計測器はすぐに電離放射線を感知し、そのたびに計測器の赤いライトが点滅し、カチッカチッと音を立てた。何かおかしいに違いない。そう思い、しばらくしてからもう一度試したが、同じ結果だった。それで今度はもう一方のエアークリーナーで試した。するとなんと、更に高い数値が出た。実に、毎分800カウントを超える数値(通常の10倍以上)だったのだ。

その時、私はすでに松村昭雄氏と一緒に仕事をしており、彼から核・放射能の専門家を紹介されていた。それで、私はその専門家に相談をすることができた。この不安な計測結果は、いったいどんな原因によるのだろうか。E-mailを用いて専門家の知見を得ることができたことは、大変幸運なことだった。相談を受けてくれた専門家は全員「この数値は高い」という意見で一致した。その原因は何か。主に考えられるのはラドンガスだという。ラドンガスはこの辺ではよく見られるもので、時には健康を害することもある。私は急いで試験キットを入手し、室内の空気と井戸水を調べてみた。結果は1週間で得られた。どこからも、ラドンガスは検出されなかった。家族の健康に悪影響が出ることを案じ、私は考えつく全てについて検討し、放射線源が何であるか突き止めるための調査を進めた。床材、キッチンのカウンター、その他の幾つかのものの放射線量が、自然放射線レベルより高いことが分かった。それでも私は、「総じてみれば、毎分約30カウント程度に収まるだろう」と、たかをくくって考えていた。

それから約1週間程してからのことだ。私は一つのことを思い出した。「チュエルノブイリ事故の数年後、事故現場付近の住民は、薪を燃やして家を温める、その一連の過程を通して、環境中に放射性物質を拡散してしまった」と何かで読んだことを思い出したのだ。私も2つ薪ストーブを持っていた。一つはリビングにある大きなもので、もう一つは主寝室に置いてある。灰に含まれる微細な放射性物質が私の計測器を汚染するかもしれないことを考慮し、紙タオルを何枚か用意して、寝室のストーブの下の灰の上にそれを重ねた上に計測器を置き、私はそのスイッチを入れた。すぐにそれは周りのレベルよりはるかに高いレベルを示した。リビングも同様だった。隣の家も同様だった。原因は明らかに薪だった。薪のほとんどは私の土地で作られたものだ。隣人たちのほとんども薪で暖をとっている。他の暖房器具を持っている人も、予備の熱源として薪ストーブを持っている。薪の煙は、極端に小さな微粒子からなっている。それは体に呼吸により簡単に取り込まれ、吸収される――このことは、私にとっては周知の事実だった。

この発見は甚大な意味を持っているように思われた。我々が呼吸している空気中に放射性物質があった、ということだ。それも、明らかに大量にあった、ということである。これらの超微粒子は長年私の家の周辺の木材の中へと生態系を通じて蓄積されていた。そしてそれが燃やされて、再び拡散した――このことは看過しえない事実と思われた。

私は直ぐに室内の空気を定期的に観察し始めた。できる限りHEPAフィルターを計測した。家にいるときには1時間ごとに計測を実施した。室内で薪の煙が無い時、室内の数値はとても低かった。私は一つのエアークリーナーを外に置いたままにし、もう一つを室内に置いた。私は公的に認められた最新の調査方法に則って計測をし、放射能計測機が表示する結果をスマートフォンを用いて写真に収め、実験記録をとり始めた。すぐに分かったことは「室内と室外では計測にそれ程差がない」ということだった。

この時点では、これがこる地域に限定された問題なのか、それとも、もっと広範囲における問題なのか、分からなかった。そうこうしているうちに山火事が起こる季節が近づいた。私は室内外で続けていた2つの計測を止め、計測を室外に絞り、注意深く観察して記録し、あるいは煙や雲がある日は空の写真も撮ることにした。長年の経験から、もう数か月のうちに山火事が起こることは解っていたので、山火事の煙が屋外でどんな結果をもたらすのか知りたいと思ったからだ。もしかしたら、私が室内で見つけた強い放射性物質と同じようなものが、あるいは山火事によって屋外でも見つけられるのかもしれない。私は準備を整えて来るべき日を待った。

今年のカリフォルニアの山火事は、実に大規模なものとなった。しかし私は、そうなることをはっきりと予想していた。私達は火事の起きやすいところに住んでいる。だから、山火事への対策はいつも真剣に検討している。2014年の山火事の時、炎が強い風に乗って広がり、わが家から半マイルの所まで到達し、私たちは避難を余儀なくされた。空中補給機が空中に一列に並び、まるで艦隊の一斉放射のように水と燃焼抑制剤を空から打ち込む、という大掛かりな措置によって、その時の私たちは何とか助かった、というのが2014年の山火事だったのだ。私たちはその様子を忘れることができない。私の養子は、そのこともあって、消防士になった。彼は炎と戦い、怪我をしては治療をし、医師からの許可を得ては、また火事の現場に戻る。そういう生活をしている。

今季の山火事もまた、同様に恐ろしい規模のもとなっている。家々は破壊され、命を落とす人々も出ている。私はとにかく、これまで蓄積した記録や写真、計測結果のデータがこの山火事によって失うことを恐れた。つい数日前、炎と煙の勢いが過去最大規模のものとなった。その時、放射能の計測値もまた高いものとなった――その数値は決して低いものではなかった。7月31日朝、放射線量は毎分1,333カウントとなり、過去最高の数値を記録したのだ。その際、私は数回にわたり計測を行ったのだが、その平均は毎分1,000カウント以上となった。今回の山火事は過去最大規模のものとなっている。おそらく、煙のはヨセミテ国立公園から湧き上がっていると思われる。その場所は、私の家から100マイル以上離れているはずだ。この煙の中で放射性物質がどんどん高濃度なものとなり、いよいよ高い放射線の計測結果を生み出しているのだろう。

カリフォルニア州の人口は4,000万人にも迫る。その圧倒的大部分の人々が、高濃度の放射性微粒子によって、知らぬ間に被ばくしているのだろうか。これらの微粒子の成分は何であろうか。その有害性は?・・・最近、カリフォルニアワインにフクシマからの放射能セシウム137が少量含まれていたという報告があり、そのことは広く知られるところとなった。フクシマ由来のセシウム137が、この土地の植物に取り込まれているのではないか――この疑いは、もはや大きなものとなっている。もしそうだった場合、そのセシウム137は、今次の山火事によって再び拡散して行くことになる。

今私たちは、この件について真剣な研究がなされるよう、強く求めなければならない。私にはこの分野における経験も学術的訓練もない。きっと何か、私たちのまだ知らない新しい説明が、納得いくものとして、存在しているのではないか。私が記録したものを見ていると、そこには微妙な色合いやばらつきがあり、そこには更に、この日までに辿った複雑な経緯がきっと反映しているのだろうと思われてくる。ともかく、私に解っていることが一つある。それは、私たちが吸い込んできた空気が、放射性微粒子で汚染されたものであったということだ。という事はつまり、その放射能がいつの間にか我々の周囲の作物に濃縮されているかもしれない、ということになる。それはまたつまり、その放射能が我々の食べ物や飲み物の中に入り込んでいるかもしれない、ということになるのだろう。

もし、私のこの推量が正しいとすると、それはつまり、私達が聞いてきた状態より、事態ははるかに悪い、ということになる。これはもう、地球規模の問題となる。そこかしこに、外来の不自然な微粒子がある。それは核時代の夜明けまで、この惑星に存在もしなかったものだ。そんなものが今、大気の中に、海の中に、そして一つひとつの生命体の中に、居場所を見つけてしまった。

カリフォルニア火事を見ながら、私は今、一つの願いを強めている。何とかして、人々がそれぞれの内なる自己満足を焼き尽くすことができないものだろうか。あるいは、一時一時の全てを用いて、我々の内なる情熱(パッション)に再び火を灯し、その熱をもって命そのものを守ることができないだろうか。たとえば松村昭雄氏は、何年もの間、彼の能力を使って、無私の奉仕を続けてこられた。国際的リーダーを一堂に集め人類共通の重要な目標に向かって結束させようと、氏は努力を続けてこられたのだ。そのような情熱を燃やすことが、私たちにできないだろうか。いや、我々はそれぞれの能力に応じた何かが出来るはずである。しかしそれにしても、与えられた時間は短い。そしてこの問題は、生涯にわたる時間を要する。そして、この問題にかかわる中で、私たちの内の何人かは、その為に命を短くしてしまうかもしれない。私たちが向き合っている問題は、そういう類のものなのだ。

 

グレッグ・リーンはカリフォルニアのタホ湖で、環境と土地使用に関する法律事務に従事している。彼は元検事で、1980年にタホ湖に来る以前は、土地利用問題を専門とする弁護士として国の仕事を引き受けていた。クリントン大統領とアルゴア副大統領がホストを務める「第一回 環境に関する大統領サッミット」が開催された際、彼はそこに参加し、そのサミットについて、公共ラジオ放送を含む様々なメデイアに出演し、数年にわたってその紹介をしてきた。また彼はシエラネバダの資源を巡る係争に関わり、頻繁に調整役を担ってきた。また彼は、妻ヘイディと共に子どもたちを育ててきたよき家庭人でもある。「一番下の子も18歳になりました。その子は電子工学に魅了されていまして、アマチュアラジオや音楽の趣味があって、メーターや機械部品の収集に夢中です。その子によると、収集したものの幾つかは実際に使えるのだそうです。まあ、その子の言い分では、という事なんですが・・・」とのことである。

 … Continue reading

7年後のフクシマ――終わらない課題

親愛なるみなさま

今日は3月11日です。私たちはフクシマ核事故の7年を覚え振り返る日を迎えています。

三つの破損した格納容器から炉心を次取り去るために、これから先、最短でも40年の年月がかかると、日本政府が認めています。このフクシマの核危機は、人類と環境に影響を与え、その安全を脅かすことでしょう。これから続く長い年月について、私たちは憂慮を覚えています。放射能を帯びた風と汚染された水が北アメリカに到着し続ける状況は、これから50年は続くだろうと専門家は心配しています。

中東と中国ではこれから更に原発を作ろうとしています。それが気候変動への対応として中心的な役割を担うと、多くの人々が信じているのです。しかし考えなければなりません。原子力が推進される中で、どれほどのリスクを私たちは生み出してゆくのでしょうか。

核の災害は自然災害によるものだけではありません。欧州でも、中東でも、どこでも、テロリストによる攻撃やサイバー攻撃が原発施設に加えられるかもしれないのです。例えばフランスには18の原発施設群がありますが、その一つででもそうした事態が起こったら、どうなるのでしょうか。そうなったら、都市であれ農村部であれ、西欧の広大な範囲が、何年も人の住めない場所になることでしょう。

政財界および宗教の指導者、科学者と大学、そしてシエラ・クラブのような環境団体は、それぞれが持つ地球規模の視野をもって、目の前にあるこの特別な問題・福島の問題を、見詰めるべきだと思います。

以上を踏まえて、以下に二つの論文をご紹介します。この二つの論文は核事故の本質を衝いた議論を展開しているものなのです。

松村昭雄

 

——-

世界の海の三分の一以上を汚染しているフクシマ(そしてさらに悪化する事態)

(『アウェアネス・アクト』誌)

フクシマで起こったメルトダウンという原子力事故――そのような災害が世界に与える影響について、ほとんどの人が理解をしていない。このような災害が起こると、メディアはすべて機能不全となり、すぐに情報は遮断されてしまう。そうしてもはや誰も、そのことについて再び考えることができなくなってしまう。

しかし、事実は事実だ。たとえ誰もそれについて語る人がいなくなったとしても、それで問題が過ぎ去ったわけではない。まったくその反対なのだ。フクシマの災害は今まさに世界に臨んでいる。実に地球の三分の一がフクシマの核災害から漏れ出たものによって汚染されていると考えられているのだ。

損傷した炉心から放出された放射性物質の80%以上が、最終的には太平洋にたどり着く。それの量はチェルノブイリやスリーマイル島の事故とは比べ物にならないものとなる。その中のほんの少量だけが海底に沈み、残りは黒潮に乗って漂流する。そして北太平洋にある莫大な量の海水と混ざりあい、海へと広がってゆくことになる。

これらの放射性物質は、二種類のセシウムを中心として確認されている。それは今のところ、東大西洋でだけ見つかり始めている。例えば2015年に、ブリティッシュ・コロンビアとカルフォルニアの近くの海岸線で、私たちはフクシマ由来の放射能汚染の兆候を発見した。確かにその量は少なかった。しかしその量の寡少をもって放射性物質の危険を過小評価することはできない。すべて微量の集積が被ばくの累積へとつながっていくのだ。

私たちは何をすべきなのだろうか。まず、「フクシマはアンダーコントロールだ」ということは間違いである。海洋中の放射性物質を見る限り、汚染水の漏洩は続いているのだから。福島第一原発から出る汚染水によって、陸地に設置された1000器以上のタンクはいっぱいになりかけている。毎日300トンもの水がくみ上げられ、壊滅した格納容器を冷却するために使われている。

この発電所を管理する責任は東京電力株式会社(TEPCO)にある。TEPCOはろ過装置を開発し、非常に危険な放射性同位体であるストロンチウムとセシウムを除去している。しかしなお、タンクの中の水にはトリチウムが残り、二つの中性子を伴った水素の放射性同位体が残されている。トリチウムは核反応に伴って生じる副産物の主なもので、それを水から取り除くことは技術的にも経済的にとても困難なものである。

現在、日本の原子力規制委員会は、80万トンの汚染水を太平洋に放出したいと言い、それは安全で合理的なことなのだと言って、疑いの目を持ち続けている世界を説得しようとキャンペーンを張り始めている。

私はここで断言しておきたい。これ以上の汚染水の放出について、IAEAとTEPCOは環境への影響を考慮する必要がある。生物全体がその影響を蒙り、その地域一帯が長期間影響を蒙り、そして結局、地球上規模の人間の暮らしに影響が出る。そのことを充分考慮する必要がある、ということを、私は強調したいと思う。

https://youtu.be/cCB_U5hLBoc

https://youtu.be/1jEy2wiV0aM

 

7年間という時間:フクシマの被ばく水夫たちは法廷に日常を探す

『ネイション』誌(グレッグ・レヴァイン)

全長300メートル超・重さ10万トン超の空母ロナルド・レーガンは、米国第七艦隊の超大型空母であって、いわゆる高速艇のようには動けない。しかし2011年3月のある日、ロナルド・レーガンをはじめとした「ミニッツ級」の艦隊は「尻を叩かれたように」して出動したと、三等級下士官のインゼイ・クーパーは語った。

しかしその後、空母ロナルド・レーガンは、まだその目標に到達していないのに、仙台湾のすぐそばまで来たところで、きわめて低速での航行を始めた。

「海を見ることなんか、だれにもできなかった」とクーパーは私に言った。「そこに見えたのは木と木材と船だった。そこにあまりに大量のがれきがあったものだから、艦は動きを止めざるを得なかったのさ。」

20年以上の軍隊経験を持つ上級下士官アンゲル・トレスは私にこう言った「あんな光景は見たことがない。」トレスは41歳。空母レーガンの航路を採っていた。その周囲は家、トラック、その他浮遊物で埋め尽くされ、それはまるで「障害物競走のようだった」という。一つ航路を採り間違えれば、「一発で艦が引き裂かれかねない」という状況だった。

空母レーガンと、その周辺にいた20隻以上の米海軍艦隊は「トモダチ作戦」に従事していた。それは東北の地震と津波の直後に始められた、9千万ドルの規模で展開した被災地救援作戦であり、人道的動員であった。水夫たちの目に、その破壊の状況はまさに恐怖そのものとして映った。むしり取られたような肉体が水に浮かんで見えた。衣服を着たままの生存者がほとんど凍りかけた水の中に眠ったようにしていた。残骸の列が延々と続き、それは終わりないもののように見えた。――その現場に向き合い、最初は、すべて訓練通りに救助活動が展開し始めた。

「通常の警戒態勢を取りました」とクーパーは言った。「訓練された通りに動きました。そういう体制に入ったということです。」

隊員たちはしかし、すぐに軌道修正をかけられることになる。

「本当に突然のことでした。こんなに大きな雲が私たちを襲ってきたのです」と、トレスは私に語った。「それは白煙ではなかったのです。一見すると蒸気漏れなのかと思うかもしれませんが。」彼はそう説明した。それは石油が燃えるときの黒煙でもなかった。彼は1991年に従軍した際、クウェートでそうした黒煙を見ていたのだ。「こんな煙は、本当に、私の見たことのないものでした。」

クーパーはその時、隊の仲間から離れてフライトデッキに立っていた。次の離陸のための点検をしようとしていたのだ。彼女はその時のことを、寒くて雪が降ってきたと記憶している。そう彼女が感じた時、どこからともなく暖かい空気の塊が吹き込んできたことを感じた。「ほとんどその直後なのです」と彼女は私に語った。「あ、鼻血が出たかな、と私は感じたのでした。」

しかし鼻血は出ていなかった。口の中にも血は出ていなかった。それでも、クーパーは確かに血の味を感じていた。「それはなんだか、アルミフォイルをかじったような感じだったのです。」と彼女は私に語った。

現地時間2011年3月11日14時46分、マグニチュード9.1の地震が発生し、65キロ離れた東日本にある牡鹿半島を襲った。20世紀以来4番目に大きな振動が本州に壊滅的な破壊をもたらした。福島第一原子力発電所は震源に近い太平洋岸に位置していた。地震によってその冷却システムは損傷し、全電力が消滅した。電力は稼働中の炉心と高レベルの放射脳を帯びた使用済み核燃料を冷却するための水の」循環に必要なものだった。

福島第一原子力発電所には、緊急時に備えて、非常用のディーゼル発電機が何台も準備してあった。しかし自身発生から一時間もしないうちに、地震によって引き起こされた津波の高さは13メートルを超え、防潮堤を破壊し、発電機を含むほとんどの機械類を水浸しにしてしまった。水に浸かってしまった発電機のいくつかは地表よりも低い位置に設置されていた。その設置はジェネラル・エレクトリック社のプラント設計者によって定められたものであった。

冷却装置を失うと、炉心の温度は上昇を始める。溜まってしまった水は沸騰し始め、ジルコニウムに覆われたウラン燃料棒が大気に触れるようになり、超高温の科学反応が水の元素を分断する。福島第一原子力発電所の所有者は東京電力株式会社(TEPCO)である。その数百人に及ぶ職員は勇敢にも冷却水の循環を取り戻そうと奮闘した。あるいは、その時すでに汚染された幾つもの格納容器は圧力が高まっていたので、最低でもその減圧を試みていた。しかし、すでに半世紀を経てしまった古い原発である。そこには既に死が埋め込まれていた。それはもう何十年もの間予想され続けた通りの結果でもあった。圧力は建物内で高まり続けた。二日の間、汚染された建物の爆発の時が迫っていった。三つの原子炉建屋で水素爆発が起こり、高放射性ガスの柱が立ち上り、高放射性デブリが空気中に高く舞い上がった。その汚染デブリは拡散し、日本は今もなおその除去に努めている。

しかしなお、この破壊と騒乱はにもかかわらず、原始力政策の推進者たちは、フクシマをしてサクセスストーリーに見せかけようとしている。「結局、これだけの自然災害に遭遇したのにも関わらず」と、原子力の信奉者は言うのだ。「誰も死んでいないではないか」と。

しかし第七艦隊の乗組員たちは、この言葉を拒否するだろう。その救助活動から7年が経った。9人が死んだ、それも福島第一原子力発電所で起こった災害によって、9人が死んだ。その任は全員アメリカ人だった――そう、この乗組員たちはあなたに語っているのだ。

この続きは、2018年3月に発表します。

 … Continue reading

パラケルススと核の時代と将来世代

エミリー・ゲイラード

アンドレアス・ニデッカー

(翻訳:神学博士 川上直哉)

16世紀初頭のバーゼル大学で教鞭をとっていた有名な医師パラケルススは次のように書き残しました。「ただ単に病気の原因が分かっただけで、その治療法も対応策も提示できないとしたら、いったいそれは、医師にとってどんな意味があり、またどんな価値があることだろうか?」

私たちは法と放射線の専門家としての立場から、最近行われたシンポジウムの報告をしたいと思います。そのシンポジウムは学際的なもので、バーゼル大学で三日間持たれたものでした。

 

核兵器に関する政策決定が、どのような影響を健康と環境に与えるのか。これが私たちのシンポジウムで検討されたテーマでした。この観点から私たちは、核実験が行われ原子力災害が引き起こされたとき、その被災者・被害者の人権はどうなってしまうのか、熟考したのです。ここで、122か国の努力による最近の成果として、国連は「核兵器禁止条約」を2017年7月7日に承認しましたが、その第6条にも「核兵器を使用し、あるいは核実験をした国は、その環境汚染の回復と被害者のための支援の措置を講じなければならない」と定められていることを、ここで想起してもよいでしょう。

 

しかし、バーゼルで行われたシンポジウムでの実際の議論のほとんどにおいて、その焦点は別のところに置かれていました。つまり、核兵器と原子力(核エネルギー)の利用が次の世代にどのような影響をもたらすのかを巡って、議論は白熱したのでした。核戦争のリスクを背負わされ、また、地球規模で進行する核の汚染の先に待つ潜在的健康被害に向き合わされるのは誰でしょうか。それは私たちの子どもたち・私たちの孫たちであり、そしてそのまた子孫たちなのです。1945年7月に「トリニティ研究所」において最初の核実験が大気圏内で行われました。その後、2000回を超える核爆発が起こりました。それは9つの国によって引き起こされたのです。その核爆発のうち数百は陸上において行われ、その結果、生態系は汚染されてしまいました。そして、チェルノブイリ原子力発電所の原子炉が爆発した結果、欧州地域に限定的ではあっても広範囲な汚染がもたらされました。更に今、福島の原子炉が損傷し、放射能汚染水が大量に太平洋に流れ出続けています。原子力(核エネルギー)の民生利用については、その廃棄物を安全に保管するための施設を作ることまで考え合わせて考えなければなりません。そうしてみるとすぐに、それは財政上の多くの問題を私たちの子どもたちや孫たちに押し付けることなのだと気づくでしょう。私たちはその過ちに手を染めているということになるのだと思います。

 

意図的であれ偶発的であれ、核兵器が使用された場合には結局、地球規模の悪影響を生じさせることでしょう。それはあるいは、人類の絶滅をもたらすかもしれないのです。「この議論の果てにおいて、政府の責任者足りうる人々、つまり、核保有国の意思決定者たちが、追及されなければならない」という結論に、シンポジウムはたどり着いたのでした。「将来世代に対する犯罪」ということが、新たな現実味を帯びて浮かび上がってきたのです。来るべき日々の地平を永遠に閉ざすものとして、あらゆる核戦争は国際法への重大な違反とされるべきものなのです。

核の時代に入った今、私たちは確かに、地球とあらゆる生命体にとっての「新しい時代」に入りつつあるのでしょう。地球とそこに住むあらゆる生命体に及ぼす人間の影響が、未曽有の大きさを持つようになったのですから。地質学者は、この新時代について、新しい名前を付けました。その新しい名前は「人新世(Anthropocene)」というのだそうです

(訳註:地質学においては、約258万年前から1万年前は「更新世」とされ、一万年前から現代までは「完新世」とされている)。

今迎えつつあるこの新しい時代において、私たちは、医療と法における倫理規範を新らたに求めなければならない、と、多くの人が確信しています。核=原子力によるリスクと災害という特別な問題に、私たちは今、直面しています。そうである以上、医学と法学の両分野においてパラダイムシフトが求められているのです。我々は今や、あらゆる生命体に世代を超えて及ぼされる電離化された放射能の影響を真剣に考えなければなりません。そして、現在生きている人々、とりわけ女性たちと子どもたちへの深刻な健康被害を防ぐための効果的な措置が、どうしても取られなければならないのです。がんをはじめとする健康被害があります。そしてそれに加えて、今被ばくをしている人々の中で起こる遺伝子への影響も考慮しなければなりません。そうして私たちは、自分たちの子孫を守らなければならないのです。ごく低線量の電離放射線被ばくを長期間続けた場合、いったい何が起こるのかについて、私たちは特別に意識を向けて考えなければならないのです。

私たちは今、この新しい現実に対応する基本的な原則を示す新たな法的枠組を共有しなければなりません。そして将来世代の人権を考慮に入れそれを保護するような新しい法律を作らなければならないのです。国際連合総会において1948年に採択された世界人権宣言は、法的拘束力を持つものではないのですが、三十条にわたる個別の権利を提示しています。その内のいくつかは核(原子力)事故の被害者と密接に関係しているものです。例えば福島県の住居を追われた人々は、自分たちの意見を表明する権利や情報を取得する権利を持つのと同様に、適切な住環境を確保する権利を持っている、と、世界人権宣言は明言しているのです。実は、日本国憲法がその権利を確定しています。そして同じその日本国憲法の11条と97条は、将来世代の人権を守ることを規定しているのです。しかし現状、これらの権利は尊重されていません。事実、日本においてマスメディアは福島で今何が起こっているかを報道することを禁じられており、また、原子炉溶融の影響が医学的にどうであるかを報道することを制限されています。日本における科学者のほとんどは、一部の例外を除くと、放射能のリスクを過小評価しているのです。それで「少々の被ばくは蓄積しても害はない」という考え方が公式なものとして広く流布しています。もちろんその考え方は科学的に支持されるものではありません。さらに、それだけではないのです。日本政府は一般人の放射線被ばく許容量を年間1ミリSvから20ミリSvに引き上げようとしています。この「年間20ミリSv」というのは、原子力関係の一般労働者にのみ認められている基準なのに、です。日本政府に関係している科学者たちは、国際放射線防護機関(ICRP)に対して、この水増しした基準を受け入れるようにと働きかけようとしています。そして大方の見方は、このことを単に非科学的であるというだけではなく恥知らずで法外であるとしているのです。こうしてフクシマは今、「原子力の破局の事後処理において何が起こり得るか」を示すものとなりました。つまり原子力の破局に瀕するとき、「人権への破壊行為と、さらには将来世代への犯罪が原子力事故の後に立ち現れ得るのだ」ということを、フクシマは世界に示しているのです。

将来世代の人権について言及し、声を上げなければなりません。それは現在、充分とは言えないのです。将来世代の人権を確実に保護するための立法措置が新たに取られなければなりません。この数年のうちに核兵器の全廃に向けた具体的な工程表を策定することが、今新たに、そして喫緊のこととして、必要とされているのです。さらに言えば、原子炉の廃炉の膨大な費用と、そして核廃棄物の安全な保管のための莫大な投資について、私たちの世代は責任を負わなければなりません。少なくともそのコストは我々が負担すべきです。それを私たちの子どもたちだけに背負わすことは、してはならないことだと思います。

 

 

エミリー・ガイラードはカーン・ノルマンディ大学(フランス)の法学准教授であり研究員。また、Pôle Risques, Qualité et Environnement Durable at Maison de la recherché et des Sciences de l’Hommeの会員である。

アンドレアス・ニデッカーはスイスの医学博士。バーゼル大学名誉教授で放射線を専門とする。PSR / IPPNWの全代表であり、現理事。「シンポジウム 人権と将来世代、そして核時代の犯罪」の準備委員会委員。

核戦争防止国際医師会議(IPPNW)は、1985年にノーベル平和賞を受賞した団体。地球規模での核兵器廃絶運動において指導的役割を果たし続け、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)を2007年に発足させ、大量破壊兵器廃絶のキャンペーンを展開した。核兵器禁止条約を2017年7月に国連が採択したが、その際の功績を認められ、ICANは2017年のノーベル平和賞を受賞した。… Continue reading

流出する毒物:アメリカの問題としてのフクシマ

2017年12月12日 松村昭雄

(翻訳 神学博士 川上直哉)

福島アップデート

2016年12月、日本国政府は、「福島第一原子力発電所の事故処理にかかる費用は21兆5千億円と想定される」と発表した。これは、それまで発表されていた想定のほぼ2倍であった。東京電力株市会社(東電)の立て直しを求める声は日増しに高まっている。加えて、それほど楽観的ではない人々は、この政府発表の想定のさらに1.5倍から2倍以上の費用が事故処理にかかるだろう、と見積もっている。

345億円の税金を投じて「凍土壁」が建設され、地下水が福島第一原子力発煙所の敷地内に入り込む問題への対処がなされている。しかし、この措置に寄せられた期待と予想は裏切られたようだ。この凍土壁がダムとなって、山の方から原子炉建屋へと流入する地下水をせき止めるはずだ、という理屈で、この措置は取られていたのだった。

2017年10月、地下水の水位は急激に上昇した。この時の建屋の基礎部分に入り込む量は一日当たり310トンに達したと見積もられている。この数値は、汚染水対策のための措置が何も講じられなかった頃の水量である400トンに迫るものだった。

「要となるはずの『凍土壁』、期待外れ」2017年11月26日付朝日新聞英字版

 

2017年11月末、東電の責任者は、原発の状態について、次のように発表しました。

「当社は次の四つの問題に取り組んでいます。(1)原発敷地内の放射能の減衰化、(2)地下水流出の阻止、(3)使用済み核燃料の回収、(4)融解した核燃料の除去、です。」

三重のメルトダウンを引き起こしてから7年が経過したというのに、東電は原発建屋の中で何が進行中であるかすら知らないでいる。いや、誰もそのことについては知らない、というよりも、そもそも、それを誰も知り得ないのだ。まさにそのことこそ、原子力のメルトダウンがもたらす主なリスクの一つなのである。誰も、どうしてよいかわからないのだ。

 

フクシマからサンフランシスコへ

はっきりわかっていることがあります。原発事故現場から汚染水は流出し続けている、ということです。フクシマの問題は太平洋へと広がっているのです。海洋生物がリスクにさらされている可能性は高く、北アメリカ大陸の西海岸では、子どもも大人も被害を受けているかもしれないのです(ひとつ前の私の論稿を参照いただきたい)。

マノア(オアフ島ホノルル東部太平洋側)にあるハワイ大学は、今年、一つのレポートを発表しました。タイトルは「フクシマの結果:北太平洋で捕獲された魚の一部にみられる放射性セシウムの一覧」です。

ハワイ大学は、北太平洋に生息し、特にハワイでよく見られる13種類の魚を採取し、ガンマ分光学分析を用いてセシウム134と137という放射性同位体を計測し、それがフクシマと関係があるものかどうかを検討した。すべてのサンプルの中から、セシウム137が研修された。この計測の信頼度は95パーセントを超えるものだった。全サンプルのうち3魚種からセシウム134を検出した。それは95パーセント以上の確率でフクシマ由来のものであった。最も高い数値はキハダマグロから検出された。その数値は、セシウム134で0.10±0.04Bq/kgであり、セシウム137で0.62±0.05 Bq/kgであった。他のサンプルについて言えば、ビンチョウマグロとメカジキから検出されたセシウム134は、2シグマ以上の不確実性の範囲(95.45パーセントの確率)でフクシマ由来であることが確認された。

5つのサンプルから、フクシマ由来のセシウム134が危険基準をこえて確認された。その確度は68パーセント(検査の不確実性は1シグマ)であった。ただし、その5つのサンプルの中の3つは、2シグマ以上の不確実性の範囲(95.45パーセントの確率)であった。

この研究が示していることは次のとおりである。ハワイ島で検査しあるいは計測した魚の40パーセント程度は、ほぼ被ばくしている。そして、その被ばくは北太平洋を還流する気流に乗った放射性セシウムによるもので、それはおそらくフクシマ事故由来のものである。フクシマ事故由来の放射性セシウムはハワイの土壌にも落下している。

この研究は、放射能に触れた魚がいること、そしてその魚がまだその被ばく影響を示してはいないことを示しています。これはフクシマ事故以来6年間の累積結果を示したものに過ぎません。そうだとすれば、どうなるのでしょうか。東電から聞こえてくる情報によると、フクシマ事故由来の汚染水は今後80年にわたり垂れ流され続けるというのです。私たちはそこに事態の悪化を想定せざるを得ません。今すぐ、私たちは、取りうるすべての手段を動員して、あらゆることに備えなければならない。それは来るべき数十年後の私たちの子孫に必ず押し付けられるだろう重荷を少しでも減らすために、です。実に、この「数十年後」というのは、ほとんどの読者各位にとっては「別世界」の事柄となることでしょう

 

沈黙の代表者

汚染は恒久的に広がり続けています。そして多くのことがわからないままなのです。それなのに、米国西海岸の政治家は未だに沈黙を守っている。どうして声が上がってこないのでしょうか。この問いに向き合って、私は、四つの理由を考えてみました。

  1. 食品と水の汚染は、ビジネスに悪影響をもたらす。釣りをする人々、農業従事者あるいは旅行業者などは、自分の予算について気にするようには、未知の事柄について気にしたいと思わない。これが第一の理由かもしれません。
  2. 軍産複合体は、核・原子力技術と防衛・安全保障とがつながっているものと考えている。これが第二の理由かもしれません。
  3. 環境運動家や気候変動にかかわる市民活動家は、炭素を排出しないエネルギー源として、原子力・核エネルギーに注目している。これが第三の理由かもしれません。
  4. この程度の放射能であれば、人間にも、魚の食物連鎖にも、そして農作物にも、一切害はないのだとする科学者が、ある程度の人数、存在している。それはフクシマ事故から7年がたった今の現実である。また、政府と原子力・核エネルギー産業の利益を大きな声で意図的に代弁する科学者もまた、ある程度いる。これが第四の理由かもしれません。

こうした利害関係者たちは、まず目先の短期的な事柄にしか興味を示しません。つまり、大海原が「覆水盆に返らず」という事態になったらどうするのか、という長期的な関心を、こうした利害関係者たちは、持ち合わせていないのです。

どこまで、この汚染は広がっていくのでしょう。この問いへの答えは、実に、5世代先になってみないと、十分には得られない。この問題は、そういう問題なのです。

議員、知事、そして市長たちもまた、この問題がどうなるのか、可能な限り様子見をしようとしています。せいぜいこの人たちの任期は、一期8年で二期、といったところです。有権者も、これから数十年の単位で懸念される潜在的な影響については、関心を持ちたいと思っていない。したがって、政治家がこの問題に取り組む動機づけなど、ないといっていいのです。私はもう40年もの間、多くの国々で、政治家をすぐそばに見ながら仕事をしてきました。とりわけ、人間にかかわる事柄――戦争・平和・環境――を課題として、私は政治家たちと議論を重ねてきました。その中で、私はいつも、感心することがありました。政治家は確かに、人々の思いを理解する能力を豊かに有している。そのことに私は常々感嘆してきたのです。政治家というものは、人々が短期的な視野で見える限りの解決を求めているということを、投票を通じて、実によく理解しています。

 

深いリーダーシップ:カリフォルニアが示しつつある解決

フクシマ事故の問題と、そこから継続している太平洋汚染の問題は、永遠の価値についての問いを提起しています。確かに、この問題は経済成長と健康の問題を含んではいるのです。しかしそれとともに、もっとはるかに深遠な問いへと、この問題はつながっています。その問いとは「私たちの地球に責任を負っていくのは、いったい誰だ?」というものなのです。

 この夏、私はカリフォルニア州北部のサクラメント市を訪れました。ブラウン知事を訪ねるためでした。知事と私は、もう数十年来の付き合いなのです。ブラウンという人は特異なタイプの政治家だと、常々私はそう考えてきました。「これから数万年先の命と人生に影響するだろう問題を、いったい誰と話し合ったらよいだろう」と考えていた私にとって、その対話の相手は彼しかいませんでした。私たちは話し合い、そして一つの結論に達しました。この巨大な環境問題を見つめるためには、新しいビジョンが必要だ。これが、私たちの結論だったのです。

「国際立法会議(International Lawmakers Conference =ILC)」を、私は想像しています。その目的は(1)選挙で選ばれた政治家の中に新しいタイプのリーダーシップを涵養し、(2)随時、医療分野への投資のあるべき姿を決定し、(3)すでに生み出してしまった25万トンの放射性廃棄物を安全に保管するための地球規模の機構を作り上げること、です。

短期的に言っても、太平洋に流れ込み続けている汚染水に関する注意喚起を、国際立法会議(ILC)が担うべきです。更なる科学的研究を促進させ、複数の政治家の注意を惹きつけ、また、複数の組織・機関の基金を呼び寄せる。やがては、そうしたことを通じて、私たちのリーダーの内面に、より大きな価値への感性がしみこんでいく。それがこの国際立法会議(ILC)です。その構成には、米国連邦政府と各州の立法機関・知事・市長が含まれ、またそれに加えて、宗教指導者と財界のトップリーダー、そして科学者と国際機関の代表者が加わるべきです。核問題緊急同盟(NEAA)のメンバーは、原子力・核問題の専門的ガイダンスを示す意味で、国際立法会議(ILC)に不可欠の役割を担うことになります。

米国西海岸の議員各位におかれては、私たちの子孫とこの地球のために、この長期的な影響をもたらす深刻な問題について、大いに声をあげていただきたいと、私は強く願っています。

 

一人の英雄の死を悼んで

最後に、一人の故人が示した英雄的な使命とその犠牲についてここに記し、読者各位にはその記憶を呼び覚ましていただきたいと思います。その故人の名は、山田恭暉(やまだ やすてる)です。彼は「福島原発行動隊」の創設者でした。この団体は次のような考えもとに設立されました。まず、放射能由来の癌の芽が発現したとしても、その症状が顕在化してその平均余命が12から15年と推定されるまでに20年ほどの時間がかかる、と予想される。若い人々がその人生をリスクにさらして原発事故現場で働くべきではない。自分たちのグループこそが事柄にあたるべきだ。――これが、山田氏が「福島原発行動隊」を設立した考えだったのです。しかしそう考えた山田氏は、2014年6月17日、食道がんで逝去しました。それは彼の予想よりもはるかに早いタイミングでした。「若い世代の命と人生を守る」という彼の掲げた使命は、彼より若い世代によって記憶されることになりました。その若い世代は、この使命を次の世代へとつないで行くことでしょう。

(山田恭暉氏については、過去の記事あるいはこちらを参照のこと)

 … Continue reading