ハーバード、いかなる妙手で次代のリーダーにビジョンを仕込むか?

松村昭雄

じりじりと照りつける暑さの八月、多くの人が極上の休暇を過ごそうと動き出す時期です。中小企業の経営者や教師はもちろん、オバマ大統領も例外ではありません。学生、保護者、教師にとっては、新学期に突入する前の貴重な休みでもあります。

オックスフォード、モスクワ、京都、リオデジャネイロ、コンヤ(トルコ)、エルサレムと、各地で催されてきたグローバル・フォーラムで、私はたくさんの優秀な学生たちと共に活動する機会に恵まれました。彼らの新鮮なアイデアと力強いエネルギーのおかげで、各フォーラムでは一層の成果をあげることができました。2007年には、当時、タフツ大学の二年生だったクリス・コテに引き合わせてもらうという幸運に恵まれました。今では、このブログの管理から構想の練り上げまでを担う彼の貢献は、なくてはならないものです。来月から、クリスはハーバード・ケネディ・スクール・オブ・ガバメントで研究を始めます。そこには、たくさんの海外留学生もいるでしょう。エリート養成を目的とした政府の派遣留学生として、険しくも希望がもてる母国の未来への先導を託された学生たちです。

カリキュラムの範囲にとどまらず、未来のリーダーたちは、共に学ぶ中で醸成される理想主義から、何かを得るでしょう。学び舎で育まれた友情 ―クラスメートならではの信頼関係から生まれた― は、学生たちにとって、生涯を通じて支えてくれる、かけがえのない財産となります。つまり、制度的、階層的規範をしのぐ、目に見えないつながりです。しかし、友情からリーダーが生み出されるわけではありません。主体的に洞察できる力を養うことに時間を捧げた者だけが、今後数十年に待ち受ける難題に立ち向かっていけるのです。

そして、その難題は、計り知れないほど大きく、前例のないものでしょう。核兵器と、それが世界中の国々にもたらす多くの問題は、国家安全保障上の最優先事項となります。しかし、問題をさらに複雑にしているのは、イスラム国(ISIS)による支配地域の拡大、民族、宗教に起因するその他の紛争、不安定な地域における原子力発電所の増加、地球温暖化が及ぼす影響の深刻化です。旧来の秩序を踏み越え、人間の安全保障から、環境や世界金融の安全保障、さらには、それらの関連性に至るまで、問題の範囲は膨れ上がっているのです。私たちの従来の時間の感覚も超越しました。第二次世界大戦後、日本はわずか二十年で、戦後の荒廃から脱し、経済発展へと復興を遂げました。今や、核攻撃(現在の核爆弾の脅威は数十倍)、あるいは、原発事故(福島第一原発四号機の使用済み燃料プールの放射能は、広島の原爆の14000倍)によって、またたく間に膨大な範囲の土地が利用できなくなり、何百年間もその状態が続くことになりかねません。私たちが引き起こした気候変動も進行し続けており、同じことが言えます。

こうした問題に取り組むことができるリーダーや組織は、いまだ育っていません。現今の政策が、何千年先にも影響するかもしれない、などと1940年代にだれが考えたでしょうか?知覚しにくい時間というものの枠を越えて効力を保つ政策づくりには、異なった考え方ができるリーダーの養成が必要です。私たちの現在の行動は、将来世代に、子世代のみならず、ひ孫の世代に、どんな影響を及ぼすのでしょうか?私たちの責任とは?リーダーとして、人間としての責任とは何でしょう?

ハーバード大学は、教授陣の多岐にわたる専門分野、傑出した知的資源から、次世代のリーダーを養成する場として申し分ありません。ハーバード・ケネディ・スクールで最も意欲のある学生は間違いなく、在学中に、ロー・スクールやビジネス・スクールの素晴らしい資源を活用することになります。リーダーに必要な、深く、主体的な洞察力を特に養おうとする学生なら、思い切って、ハーバード・ディビニティ・スクール(神学系大学院)に一歩を踏み出してみてはどうでしょう。何百年、何千年を経た書物や歴史を時間をかけて学ぶ宗教指導者には、おのずと長期的なビジョンが身につきます。マネージメント、交渉、分析といった短期的スキルは、多くの国際的政治危機の回避に資するでしょう。しかし、私たちが必要としているのは、任期内にとどまらず、何世代先をも見据えて思考していけるリーダーです。.

次世代に向けた的確で大胆なビジョンを持つ、新鋭のリーダーとして台頭するのは誰か?かつてない対立を、先頭に立ってくぐり抜けていくためのビジョンを持つ学生たちを奨励することで、ハーバードも名実ともに先頭に立つことになるのです。

(日本語訳 野村初美)Continue reading

Die Heiligkeit des Erinnerns

Lieber Herr Matsumura!

Warum habe ich diesen Roman geschrieben?

Der Roman mit dem Titel Die Heiligkeit des Erinnerns wurde geschrieben, um Nagasaki und Hiroshima aufzuarbeiten und die moderne Geschichte von jenen Mythen und Missverständnissen zu befreien, die immer noch mit der Verwendung von Atomwaffen verbunden sind. So wie sich Amerika Schritt für Schritt verändert hat, so hat der Roman Form und Zweck angenommen. Eine zuvor noch nicht gehörte Stimme musste in der Kunstform des Romans geschaffen werden, die die geeignetste Form für die Wahrheit ist. Wie in jeder poetischen Prosa wird die Klage des Kranken behandelt und unerwartet hörbar – ich wusste, dass das geschehen würde, wenn ich an der Sache dran bleiben würde, daran weiter arbeiten und sie verbessern würde, bis Hilfe kommt. Ich schrieb den Roman, weil ich der Überzeugung bin, dass sowohl eine von Gott geschaffene und dauerhafte Nation als auch eine Welt unter demselben Gott lernen können, sich gegenseitig in Wahrheit zu erkennen. Meine Figuren sind so angelegt, dass sie jeden auf der Welt, unabhängig von seinem Wissensstand, ansprechen können, bis alle Dinge neu geschaffen sind. Leider kann ich in dieser Sache nur mit einem Roman dienen, aber er ist gut und ich bin glücklich, dass ich ihn abgeschlossen habe, um den kommenden Jahrestag zu würdigen. Ich war als junger Soldat in der Armee der Vereinigten Staaten der Strahlung von vier Atombomben ausgesetzt. Dieser Roman ist der Fallout dieser Bomben, er lässt mich „heraus fallen“, er ist aber auch mein Einstieg in die Reihen der grenzenlosen Wahrheitssucher.Continue reading

小説『 The Sanctity of Remembering

松村昭雄様

なぜ、私はこの小説を書いたのか?

 

小説『 The Sanctity of Remembering  』は、ナガサキとヒロシマの記憶をよみがえらせ、原子爆弾の使用にまつわる、相も変らない通説や誤認が重ねてきた現代史を洗い清めようと執筆しました。アメリカの人々の考えを一つずつ変えていきながら、この小説も形を成し、目的が定まって行きました。以前は耳にしなかった意見が、フィクションの世界で生み出される。真実を伝達するに最善の方法です。詩趣に富んだ散文からはどれも、非道な仕打ちや思いもよらない不幸からわき上がる切々たる響きが聞こえてきます。私も課せられた仕事にひたすら取り組み、書き、推敲し、助けが得られるその時まで続けていれば、その響きが聞こえてくるのだろう、と悟ったのです。私がこの小説を書いた理由はこうです。神の加護のもとにある一つの国家が、自由という理念によって打ち立てられたのであれば、その国家は永らえるだろう。そして、同じ神のもとにある一つの世界は、真に互いを理解しあうようになるだろう。このように考えたからでした。私が描いた登場人物たちは、この地球が抱えるあらゆることに、自分たちが知り得るかぎりの手段で立ち向かうことを余儀なくされています。すべてが一新されるまで、彼らは向き合い続けます。小説だけでしか信念を伝えられないのは残念ですが、作品としてはよいものに仕上がっています。そして、被爆69周年に際して、この本が完成しましたことを嬉しく思っております。私は、米陸軍兵士だった十代の頃、原爆によって四回被爆しました。従って、この作品は、原爆によって放射性降下物が生じるように、私の経験から生まれた副産物です。そして私は、国境を越えて真理を探究する者の立場に降り立ったのです。

 

ジョン・マッケイブ

 

The Sanctity of Remembering

ジョン・A・マッケイブ著*

二つの全く異なるストーリーがそれぞれに展開され、読者は、一体これらがどうやって交わるのか、と心待ちにせずにはいられない。広島の原爆投下で孤児となった、若い日本人女性レイコは、アメリカ人の修道女に育てられた。英語を身につけたおかげで、彼女は、1962年、アメリカ人の作家の秘書兼翻訳者の職に就くことができた。この作家は、もとはカトリック教会の司教であった。そして、長崎原爆の被爆者でもあった。

主人公のマクグラスは、典型的なアメリカ人の若者。親友のスポッツ・ダニエルズと共に陸軍に入隊する。1962年の夏、二人は疑念を抱くこともなく、砂漠への行軍に参加する。そこで、四回にわたる核爆弾の爆発で被爆する。この核爆発は、アメリカ政府による実験で、核兵器が使用される戦場での歩兵の状態を見定めることを目的としていた。核実験場での体験は、二人を生涯にわたって、肉体的、精神的にじわじわと苦しめ続けることになる。友達のダニエルズはついに白血病に侵される。彼は亡くなる前に自分たちの被爆と日本人の被爆とを比較し、学を深める。そして、レイコの雇い主である元司教と手紙を交わすようになった。

砂漠で真実があらわになったあの瞬間から、十六年の歳月が流れ、マクグラスは自分が目にした光景を明かし、「被爆者」とのつながりを感じていることを吐露し始めた。彼が仕事で日本へ出張した時のことだ。ダニエルズの妻が日本のマスコミに、彼が未解決の核問題と米政府に関する任務を帯びて来日したのだと、洩らしてしまう。おかげで、マクグラスの行く先々に、熱心な記者がずっと付いてまわることになる。マクグラスは、長崎に彼のガイド兼通訳として同行したレイコと知り合いになる。長崎市街を見て回り、ダニエルズの文通相手だった司教のロックス とも出会う。

マクグラスがロックスとレイコと共に純一な気持ちで始めた研究は、予期せぬ政治的関心を呼び起こすこととなる。戦時中の日本人の心にあったアメリカ人への嫌悪は衰えていなかったのだ。マクグラスは、狂信的行動に走る者に誘拐され、外部との連絡を遮断されたまま何週間も監禁される。一方で彼らはレイコを脅迫し、米政府に謝罪を要求させようとする。マクグラスを、プロパガンダを目的として日本へやってきたと思い込んでいたのだ。長崎で解放された時、マクグラスの人格は変わっていた。とてつもない災禍を目の当たりにし、出会った人、訪れた地に聖性を垣間見た彼が、どこかおかしくなってしまったように人は思った。

劇的場面は、元司教のロックスと最後に会うところである。その時マクグラスは、驚くほど、高潔さと健全な心をすっかりあらわにして見せる。二人だけが知る事実が明かされる。1945年8月9日、二人は不思議な体験をした。あり得ないことなのだが、マクグラスもロックスも、自分たちの体験が本物であることを知っている。そして、二人は、他人には非論理的にしか聞こえないような会話を交わしながら、追想していくのだった。

マクグラスは、妻と四人の友人を連れて、再び長崎と広島を訪れる。レイコと記者のナツメが案内役だ。レイコのおじのシロウは僧侶で、彼もまた被爆者だった。シロウは、マクグラスの一行に、危険が潜んでいることを忠告する。そしてそれは、予想だにしないタイミングで現実となる。東京に戻る途中、マクグラスらが乗るワゴン車にトラックがあからさまに追突してきたのだ。搬送された病院で、マクグラスは、かつて自分を誘拐した人物と出くわす。彼は誰が自分の敵なのか分からなくなり、混乱する。自身の被爆体験が、中国のスパイグループを刺激していたことを知るのだ。この諜報団は、米国原子力委員会との内密の取引が、マスコミに次第に大きく報道されることを恐れていた。新たな危機に、マクグラスは日本に滞在中、ずっと脅かされる。レイコとロックスもまた標的となり、安全のため国外へ移住する。マクグラスとナツメには、意外な筋からの保護がもたらされた。やっとのことで、無事帰国を果たしたマクグラスだが、生活はすさむ。だが様々な体験をしたことで、不思議と充実もしていた。真相が明らかになっていく中、マクグラスがおそろしい塵、そこに含まれるウラン、人が作り変えた死の放射体と直面する場面は圧巻だ。生きとし生けるものに投げかけられる善と悪の選択という途方もない難問から、マクグラスの思考はある言葉へとつながって行く。「暗闇の記憶はいつまでも続かない。いつかは忘れ去るものだから」そして、マクグラスは、まるで荒地を立ち去る者のように、突如、平凡な日常へと回帰していく。人類に授けられた新たな現実を待ち望む者の一人として。

*『The Sanctity of Remembering 』のあらすじについては、以下からのまとめです。

グウィネッド=マーシー大学名誉教授アン・K・ケイラーによる書評

Phang University of Science and Technology客員教授ジョシュア・A・スナイダーによる論文『American Hibakusha

作者ジョン・マッケイブ自身による書評

THE SANCTITY OF REMEMBRANCE』刊行にあたって

日本の二つの街への原爆投下と、その後も続く核実験を伴う軍備拡大競争は、長らく道義性を問われてきました。1945年9月、ジェームズ・ギリスという学者が次のように書いています。ギリスは神父であり、『The Catholic World』の編集者でもありました。「我々は…文明と道徳律に対して、かつてないほどの強烈な打撃を与えた」。作家のトマス・マートンは、「言語に絶する」と述べました。平和を唱えた神学者ジェームズ・ダグラスが称した「冷戦の理論体系」は、『 The Sanctity of Remembering』にある通り、大気圏内の核実験を可能ならしめました。周知されていない最新の歴史説明を追いつつ、原爆の使用にまつわる通説と誤認を洞察し、物語の中に映し出しています。1945年8月以前に、日本への侵攻は中止されていたのか?そしてその情報を隠ぺいしたのは誰か?ソ連軍の猛攻撃と米軍による海上封鎖の奏功が、日本を終戦へと向かわせたのか?マンハッタン計画から現在に至るまで、アメリカの核に関連した官僚機構は、過剰な資金が投入された上に、制御不能な状態であったのか?今日の国家安全保障局にその恐れがあるように。

ジョン・A・マッケイブの小説は、道徳的観念に基づいた作品であり、安易な教訓は排しています。しかし、人間社会が経てきた歴史と統治についての記録が正当なものなのか、根本的な問いへと読者を誘い込むのは、むしろ、スパイ小説並みのスリルでぐいぐい迫る筆致と、異彩を放つ登場人物たちです。おそらくこれまで日本で聞かれることのなかった一人のアメリカ人の声が、ナガサキとヒロシマの事実をもう一度語ろうとしたことで、真に迫る文芸小説となりました。新たな視点が生み出され、アメリカ人被爆者は、キノコ雲の記憶をまさに呼び戻し、高らかに語るのです。

二つのストーリーに登場する人物たちのどちらにも共感し、双方は並び立っています。レイコと僧侶である彼女のおじは、日本画の筆遣いのように繊細な描写で、マクグラスと彼のアメリカ人の仲間たちは、その時代のテクニカラー映画のように鮮やかな色彩で描かれています。実に、織り合わされた二つのストーリーは、別々の小説のように読むことができます。一方は、川端康成や大江健三郎、遠藤周作らの作品を彷彿させ、片方は、エリア・カザンの映画を想起させます。しかし、登場人物らの持ち味にとどまらず、さらに興味深いのは、レイコとマクグラスの中に、真理の悟りが火花のように生じる部分です。この神聖な火花は、それぞれの内で燃え続け、やがて、核兵器に対する各々の答えが油のように注がれ、次第に燃えさかる炎となっていくのです。

ジョン・A・マッケイブ

400 Grandview Avenue

Feasterville, PA 19053

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The Sanctity of Remembering, una novela de John A. McCabe

Estimado Señor Matsumura,

¿Por qué escribí la novela?

 

La novela, The Sanctity of Remembering fue escrito para resucitar a Nagasaki e Hiroshima, y para purgar la historia moderna del mito y abusos que aún rodea el uso de bombas atómicas. Mientras que el cambio de la voz de América por uno, y por lo tanto cada uno que la novela tomó en forma y propósito. Una voz previa aún no fue escuchada: el arte de la ficción, el mejor medio de transporte de la verdad. Como en toda la prosa poética del sonido estridente de los enfermos tratados e inesperados se vuelve audible como sabía que haría si me quedé en la tarea y seguí escribiendo y revisando hasta que llegara la ayuda. Escribí la novela porque concebí que una nación bajo Dios concebida en libertad que aguantó, y un mundo concebido bajo el mismo Dios, debían aprender a conocerse unos a otros en la verdad. Mis personajes fueron acusados ​​de hacer frente a todos en este mundo en todos los sentidos que sabían hasta que todas las cosas son hechas nuevas. Lástima que sólo tengo una novela para dar a la causa, pero es una buena, y estoy feliz de tenerlo completo para honrar un aniversario más en Japón. Estuve expuesto a cuatro bombas atómicas como soldado adolescente en el Ejército de los Estados Unidos y ésta fue mi caída en las filas de los buscadores de la verdad sin fronteras. También sepa por favor que este comentario es especialmente concebido y sumamente atrasado​​.… Continue reading

Anomalies, malformations et résilience : nouvelles études sur les effets des radiations sur la vie sauvage à Tchernobyl et à Fukushima

Cher Akio,

Merci de m’avoir donné l’opportunité de partager ce bref résumé de mes activités de recherche en Ukraine, en Biélorussie et au Japon, et d’exposer mes projets d’études à venir dans ces régions. Mes objectifs cette année sont de continuer à renforcer notre collaboration multinationale, de poursuivre nos efforts de recherche en cours à Fukushima comme à Tchernobyl, et d’obtenir de l’aide pour coordonner et ouvrir de nouvelles voies de recherche qui impliqueront des chercheurs du Japon et d’autres pays.

Il n’existe actuellement aucun autre groupe important qui organise ou sponsorise ce genre de travail, ce qui fait que nous passons à côté de précieuses  occasions d’observer et de comprendre les conséquences des accidents radiologiques sur les populations naturelles ; ces opportunités ratées peuvent être cruciales pour prédire les effets à long terme des accidents nucléaires et d’autres sources d’irradiation dans l’environnement sur les populations humaines. Sans cette recherche il est impossible de se fier aux évaluations des risques qui affecteront les populations humaines vivant au Japon ou les personnes visitant le pays à l’avenir.

Cordialement,

Timothy Mousseau, docteur en biologie
Université de Caroline du Sud

Le programme de recherche Tchernobyl + Fukushima 

Timothy Mousseau

Le programme et ses activités de recherche

Le siège du programme de recherche  Tchernobyl + Fukushima (CFRI) se trouve à l’Université de Caroline du Sud, à Columbia. Les recherches ont commencé officiellement en Ukraine en 2000, et à Fukushima en juillet 2011. À ce jour, le groupe a mené plus de 30 expéditions de recherche à Tchernobyl et 10 expéditions à Fukushima.… Continue reading

異常・奇形・適応 ― チェルノブイリと福島 放射能と野生生物に関する新研究から

親愛なる昭雄様 

この度、ウクライナ、ベラルーシ、日本を対象に行った私の研究概要、並びにこれら地域に関する研究の将来構想を皆様にご報告する機会をいただき、御礼申し上げます。私は、来年度に向け、多国間の協力態勢のさらなる強化、福島とチェルノブイリに関して現在行っている研究の継続、日本や各国の研究者と共同の新しい研究法実践のための支援の獲得を目標として掲げております。  

現在、こうした活動の総括や後援を担う中心的組織は他にありません。従って、私たちは放射能事故が自然集団に及ぼす影響を観察し、理解する大事な機会を逃している、と言えます。放射能事故とその他の環境中の放射能が、人間集団に与える長期的影響の予測を立てる上で必要不可欠であるのに、このままでは、将来、日本への居住、渡航についての危険度を評価しても、高い信頼性は得られないでしょう。 

ご多幸を祈って

サウス・カロライナ大学
博士
ティモシー・ムソー

チェルノブイリ+福島 リサーチ・イニシアティブ

ティモシー・ムソー博士

研究方針について

チェルノブイリ+福島リサーチ・イニシアティブ(CFRI)は、米国サウス・カロライナ州コロンビアのサウス・カロライナ大学が中心となり、2000年にウクライナ、2005年にベラルーシ、2011年7月には福島で正式な調査活動を開始した。現在までに、チェルノブイリで30回以上、福島で10回に及ぶ現地調査を行った。

チェルノブイリと福島、いずれの原発事故でも大量の放射性物質が放出された。常風による放射性物質の拡散で、チェルノブイリでは約200,000k㎡、福島では約15,000k㎡の範囲が高濃度に汚染された。どちらの地域も、放射性物質の広がりは均一ではなく、放射線量の「高」と「低」の地域が微細なモザイク状に点在していた。このつぎはぎ細工のような放射線量の分布状況をもとに、生体システムへの遺伝的、生態的、進化的影響について、調査を繰り返し、ある程度まで細密に探ることが可能だ。そして、そこから科学的に精度の高い検証結果が得られる。ともすれば、制限された不自然な環境条件になりがちな、実験室での研究や旧来の実地調査では成し得ない。この点は、重要だ。原発事故が生物に及ぼした影響の究明に、放射能汚染物質と環境要因の相関関係が重要な手がかりとなり得るからだ。このように、放射能汚染の影響は本来、環境を構成する諸要素を尺度に研究すべきである。一方、人間集団に関する研究だけは制約が多いため、放射能汚染の長期的影響を把握しようにも、限界が生じる。

サウス・カロライナ大学のチェルノブイリ+福島リサーチ・イニシアティブは、現在のところ、自由生息する自然個体群への環境面と健康面の影響について、幅広い専門分野から調査している、最初にして唯一の研究グループである。そのため、急性(短期的)被曝と慢性(長期的、複数世代にわたる)被曝の両方を調査していくことが可能だ。

チェルノブイリ+福島リサーチ・イニシアティブはまた、現在、チェルノブイリと福島の両地域を対象に調査を行っている唯一の研究チームである。

学術研究資金は主に、サミュエル・フリーマン・チャリティー基金、フランス国立科学研究センター、アメリカ国立科学財団、ナショナル・ジオグラフィック協会からの提供である。次いで、北大西洋条約機構(NATO)、アメリカ民生研究開発財団、(CRDF)、アメリカ国立衛生研究所(NIH)、キアゲン社(本社・ドイツ)、フルブライト記念財団、サウス・カロライナ大学研究事務局、ならびに教養学部、フィンランド・アカデミー、個人寄付によって支えられる。

これまでのところ、過去7年間を中心に、リサーチ・イニシアティブの研究から60以上の学術論文が発表されている( http://cricket.biol.sc.eduから閲覧可能)。そして、これらの研究が、『ニューヨーク・タイムズ』、『エコノミスト』、『ハーパーズ』、BBC、CNN、PBSニュース・アワーといった沢山の新聞やテレビで大きく報道された。

研究チームは、チェルノブイリと福島の原発事故による慢性的低線量被曝の影響を健康面と環境面から解明すべく、生態学、遺伝学、線量測定技術を率先して駆使してきた。また、鳥類、哺乳類、昆虫類の自然個体群の生態調査を反復的に行って、個体数を調べ、個体群統計学から影響を解析した。例えば、DNA塩基配列と遺伝毒性試験から、野生で暮らす個体への短期的、長期的な遺伝障害を調べる。また、野生動物に小型線量計を取り付け、放射性物質による鳥類、哺乳類への全身負荷を野外測定し、自然条件下で生きる動物が内部、外部被曝で受けた放射線量の正確な推定値を得る。最近では更に、チェルノブイリ原発事故の影響を受けたウクライナの住民(特に子供)を対象とした、疫学、および遺伝学研究にも乗り出した。

研究の主な結果が、2013年から2014年に発表された。その中で、チェルノブイリの高線量地域に生息する鳥類から、腫瘍、白内障、精子の異常の発見、そして福島では、生物多様性への影響が報告されている。また、興味深い事例として、鳥類の中に、体内の抗酸化物質量を変化させて、放射能に対する抵抗力をつけた可能性のある種が新たに発見、報告された。しかし、高濃度汚染地域に住む鳥のオスの多くは、無精子症である。最近では、チェルノブイリ、福島の両地域で、小型哺乳類の神経発達への影響も認められた。

チェルノブイリと福島では、事故後の経過年数が異なる。放射性核種の放出量と種類についても違いがあるが、検出される主な核種は、両地域とも、セシウム137である。

 

研究内容について

チェルノブイリ+福島リサーチ・イニシアティブが発表した主な研究結果は次の通りである。

• チェルノブイリの高濃度汚染地域で、鳥類、哺乳類、昆虫類、クモ、それぞれの種(多様性)において、著しく個体群サイズが縮小し、個体数が減少している。 

• 高濃度汚染地域に生息する鳥類、小型哺乳類の多くが、生存期間が短くなり、繁殖力が低下している。

• 福島では、事故直後の夏に、鳥類、チョウ類、セミ類のみが著しい減少を示した。他の種について悪影響は見られなかったが、引き続き、個体数の変化を追跡している。 

• 放射性核種の影響は、種によってかなりのばらつきがある。影響を受けていない種は少数である。中には、チェルノブイリ、福島の高濃度汚染地域で、個体数が増加したと見られる種もある。これは、生存競争からの解放(食べ物や住みかを得られやすくなった)、捕食動物の減少、放射能への適応が推測される。

• 種の多くは、急性被曝による遺伝子損傷の徴候を示している。この点について、福島とチェルノブイリに差異が見られるのは、種によっては、遺伝子の変異が蓄積し、数世代を経た後に異常として表れるからだと考えられる。

• 被曝による遺伝子の損傷が見あたらない個体や種もある。また、電離放射線に対する防護作用を持つと考えられる抗酸化物質を活発に生成して、放射能への進化的適応を見せた種も存在する。 

• 鳥類の中で、放射能の影響によって個体数が減少する傾向の強い種は、自然史的に見て、被曝以外の理由でも突然変異率が上昇しやすい。原因は、DNA修復能力や酸化ストレスへの防御力の低下が関連していると考えられる。 

• チェルノブイリの放射線被曝の影響として、自然個体群に、白内障、腫瘍の罹患率の上昇、奇形、精子の異常、不妊、白化の増加が見られる。

• 鳥類、げっ歯類の脳容積の減少から明らかなように、神経発達が阻害されており、その結果、鳥類には認知能力や生存能力への影響が見られる。

•2013年に福島で、鳥類に発達異常の初期徴候が認められたが、鳥類、げっ歯類について、有意な遺伝子損傷の発生は報告されていない。

• 高線量地域における、樹木の生長と土壌微生物の分解活動もまた低下している。

以上の調査結果は、個体、個体群、生態系といった自然を構成する諸要素への原発事故の影響をはっきりと映し出している。チェルノブイリと福島の汚染地域で、生物多様性と個体数の低下の原因と考えられる、数多くの発達異常と奇形が実例である。従って、これらの結果は、国連チェルノブイリ・フォーラムと国連科学委員会による、根拠に乏しい楽観的な報告とは、全く対照的である。生物の個体、個体群が放射能汚染の危機に対してどのように適応していくのか、その経時変化を見定めていくだけでなく、人が再び住めるようになってからも研究、調査を継続していく必要がある。

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2014~2015年の目標

現在、チェルノブイリ+福島リサーチ・イニシアティブは、研究活動への資金援助を求めている。進行中、そして将来的な研究活動としては、次の通りである。

1) 福島に生息する鳥類、小型哺乳類、昆虫類のモニタリングを引き続き行う。そこで、個体群の規模(個体数)、種数(多様性)の経時変化を追い、修復時間の長期的予測を立てる。

2) 福島とチェルノブイリに生息するツバメ、げっ歯類(ハツカネズミ、ハタネズミ)の癌、生存能力、生殖能力、遺伝子損傷のモニタリングを引き続き行う。(フランス国立科学研究センター、立教大学、日本野鳥の会、(独)森林総合研究所、フィンランドのユヴァスキュラ大学との共同研究)

3) 福島に生息する樹木の生長、土壌微生物の活動から、放射能の影響を研究する新しいプロジェクトを開始。(名古屋市の中部大学との共同研究)

4) 福島の高線量地域に住む牛の生育、繁殖、遺伝子の損傷から、放射能の影響を調査する新しいプロジェクトを開始。 

5) 全ゲノムのDNA塩基配列を解析して、ヒトの突然変異率を詳しく調べる新しいプロジェクトを開始。まず、ウクライナの放射能汚染地域に住む家族に焦点を置いて調査する。このプロジェクトは、マギル大学モントリオール神経学研究所、および病院、コロンビア大学放射線医学研究センター、キエフ市の放射線医学研究所と共同で進める。

6)野生動物集団における被曝量と遺伝子損傷の新しい測定方法の進展を図る。

7) 所属機関から独立して調査ができる科学者で、国際的コンソーシアムを結成し、原発事故による健康と環境へのリスクについて、公平かつ具体的証例に基づいた情報の提供を目指す。このコンソーシアムは、最新の科学、医学文献からまとめた情報を一般向けに編集、評価、解説し、日本や世界各地での講演会はもちろん、紙媒体やインターネットを介して、多くの人に情報を行き渡らせる役割を担う。

 

詳細についてのお問い合わせはこちらから

Dr. Timothy A. Mousseau

Professor of Biological Sciences

University of South Carolina

Columbia, SC 29208 USA

803-920-7704

Mousseau@sc.edu

(日本語訳 野村初美)… Continue reading

Ein richtungsweisendes Gerichtsurteil stellt in Japan die Sicherheit an erste Stelle – bei den Olympischen Spielen sollte dasselbe gelten.

Akio Matsumura

Ein Bezirksgericht in Japan hat entschieden, dass die beiden Oi Reaktoren der Kansai Electic Energie Gesellschaft wegen struktureller Mängel nicht wieder in Betrieb genommen werden dürfen. Im Beschluss des Bezirksgerichts Fukui ist – nach einem Artikel im Mainichi Shimbun – zu lesen:

„Das Recht des Einzelnen auf Schutz seines Lebens und seiner Lebensgrundlagen ist einer der höchsten Werte in der Verfassung. Deshalb kam das Gericht zu dem Schluss, dass 'es nur natürlich wäre, Atomkraftwerke außer Dienst zu nehmen, wenn sie eine bestimmte Gefahr darstellen – allerdings wäre es ein überzogenes Argument zu sagen, dass die Existenz solcher Anlagen laut Verfassung unzulässig ist'.“

Bis zu diesem Urteil haben die japanische Regierung und die Gesetzgebung Entscheidungen getroffen, die die Wirtschaft stärken und die Importe verringern sollten. Dieses Urteil ist umsichtig und stellt die Gesundheit von Mensch und Umwelt über die Handelsbilanzen.

Weiters schreibt die Japan Times zusammenfassend:

Der entscheidende Punkt in diesem Urteil ist die Feststellung, dass es sich wissenschaftlich nicht bestätigen lässt, dass kein Erdbeben stärker sein könne als das im Worst-Case Szenario des Betreibers angenommene. Es wurde darauf hingewiesen, dass es seit 2005 im Umland von vier Atomkraftwerken zu stärkeren Erdbeben gekommen ist, als die angenommene maximale Stärke für das Betriebsgelände es erlaubt hätte. Es sei ein „haltloser Optimismus“, in diesem von Erdbeben gefährdeten Land anzunehmen, dass ein derartiger Erdstoß niemals die Anlage von Oi treffen könnte – so das Urteil. 

Es bleibt abzuwarten, ob Japan den Entscheid des Bezirksgerichts Fukui respektiert oder ob es mit dem geplanten Neustart fortfährt.… Continue reading

Priorité à la sécurité : un tribunal japonais prend une décision capitale. Les Jeux olympiques suivront-ils la même voie ?

12 juin 2014

Akio Matsumura

Au Japon, un tribunal régional a décidé que Kansai Electric Power Company n’avait pas le droit de redémarrer les deux réacteurs de la centrale d’Oi, pour des raisons de faiblesses structurelles. Un article du Mainichi  rapporte cette déclaration du tribunal de Fukui :

« Le droit personnel des individus à protéger leur vie et leurs moyens de subsistance est de la plus haute importance selon la Constitution. Le tribunal a donc conclu qu’il « serait tout à fait naturel de suspendre les centrales nucléaires si elles induisent des risques spécifiques de danger – même s’il est exagéré d’affirmer que l’existence de ces centrales n’est pas autorisée par la Constitution. »

Jusqu’à cet arrêt de justice, les décisions du gouvernement fédéral et du système juridique du Japon étaient destinées à renforcer l’économie et minimiser l’importation. Le présent arrêt a mis l’accent sur le principe de précaution et donné priorité à la santé humaine et environnementale sur la balance des paiements.

Le Japan Times a également résumé la situation :

Le point crucial de l’arrêt du tribunal est l’affirmation qu’il est par nature impossible de déterminer sur des bases scientifiques qu’un séisme d’une amplitude supérieure à celle qui est prise en compte par le pire scénario de l’opérateur ne se produira pas. L’arrêt indique que depuis 2005, quatre réacteurs nucléaires japonais ont subi des secousses sismiques plus fortes que le niveau maximum  prévu pour les centrales en question. C’est faire part d’un « optimisme injustifié », dans un pays où les séismes sont aussi courants, que de penser que des secousses de cette magnitude ne frapperont jamais la centrale d’Oi, a rappelé l’arrêt.… Continue reading

日本 安全性に重きを置いた画期的判決   ━ 後に続け、東京五輪

松村昭雄

日本の地方裁判所が関西電力大飯原発の原子炉2基について、同原発の地震に対する構造的欠陥を挙げて運転差し止めを命じました。福井地裁の判決内容について Mainichi Shimbunの社説から。

 「住民の生命や生活を守る人格権が憲法上最高の価値を持つ、と述べ、

 『原発の存在自体が憲法上容認できないというのが極論にすぎるとして

 も、具体的危険性が万が一でもあれば差し止めが認められるのは当然』

 と結論づけた。」

この判決が出る以前の日本政府は、法体制で経済強化と輸入の最小限化を後押しすることを決定していました。今回の司法判断は、原発に対する強い警告を発し、人と環境への安全性が貿易収支に優る、としたものです。

更に、Japan Times 上では、判決を次のように要約しています。

 福井地裁の判決で重視すべきは、最悪のシナリオを超える規模の地震は発

 生しないと科学的見地から想定することは本来的に不可能、と裁断した点

 だ。また、2005年以降、全国4つの原発で想定の地震動を超える地震が到

 来している、と指摘。この地震大国日本において、基準地震動を超える地

 震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しである、と

 判決で述べられた。

日本が判決を尊重して大飯原発の運転を停止するのか、あるいは再稼働を継続するのかはこれから見守っていかねばなりません。

日本のオピニオンリーダーたちが、国内総生産(GDP)を押し上げて国を活気づかせ、国民の士気を高めるには、2020年の東京五輪開催は不可欠である、と言うのをよく聞きます。しかしながら、福井地裁の判決のように、五輪を商機と捉えるよりも、世界で活躍するアスリートたちの安全性を確保することがより重要であると私は考えます。.

幸い、東京オリンピックを地球環境と人間の福祉から見て、出場選手たちの健康に懸念を示す観察者がいます。先回、私はヘレン・カルディコット博士が国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長に宛てた手紙 を紹介しました。手紙の中で、博士はIOCに対し、生物医学の専門家による独立調査団の招集を訴えました。

2014年5月16日、カルディコット博士は、IOCの副会長で、東京五輪調整委員会の委員長であるジョン・コーツ氏から公式回答を受け取りました。

 「IOCにとりまして、また東京五輪の準備状況を監督する調整委員会の

 委員長である私にとりましても、出場選手の健康と安全は最優先事項であ

 ります。東京五輪開催中、選手たちが確実に安全な環境で競技を行えるよ

 う最善を尽くすつもりでおりますので、ご安心ください…

 開催国日本からの回答で、日本が国民を守るために様々な重要対策を実

 施していることは明らかです…」

日本は、「放射能による健康リスクについては、関連省庁が広範囲から厳しい検査を行っている」と報告しています。

無論、報告は独立した監視と検証によるものではありません。コーツ氏とその他IOCのメンバーは、五輪開催の準備と福島の事故処理の状況を評価するにあたって、専ら日本からの情報に依拠しています。

こうした日本とIOCとのやり取りについて、スコット・ジョーンズ博士の所見を参照してみたいと思います。ジョーンズ博士は、アメリカの元海軍将校です。核搭載機パイロットの資格を有し、朝鮮戦争、ベトナム戦争に従軍しました。また、米上院外交委員長であり、バイデン副大統領をして「核兵器拡散防止の闘将」と言わしめたクレイボーン・ペル上院議員の特別補佐官を務めました。

スコット・ジョーンズ博士の手記より

 地震と津波がもたらした恐ろしくも予測可能な結果は、日本国民、そし

 て今や世界中にとってますます過酷なものとなっている。

 

 人命が危機に瀕している時、利用可能な最善の科学的、医学的知識に従って、

 誠実に政治的決断を下していると明言できること、これが政治家にとって

 最強の守りとなる。 

 

 だが、フクシマを巡っては明らかに実行されていない。状況を正すやり方

 はある。日本政府、関係官庁、IOCが、立ち止まって、工学、医学、科

 学的検証で事故の実態を探り出し、日本と世界の人々の生活を守るために

 できること、すべきことを模索していく、こうしたことが先延ばしになっ

 ている。

 

 現在と将来にわたって、日本の子供たちや高齢者の健康問題に直接取り組

 むやり方だ。そして、2020年の東京五輪に世界中から訪れる観客や選手た

 ちの安全性にまつわる曖昧さを払拭することにもなる。

実に、独立審査がなされれば、福井地裁判決の精神と合致したものになるでしょう。五輪開催地に住む日本人も、世界のトップアスリートも、「根拠のない楽観的見通し」に基づく評価に安全性は委ねられません。慎重かつ精密な調査に基づくべきです。そのために、コーツ氏を始めとするIOCメンバーは、国際的な独立審査を東京五輪開催の必要条件にすべきです。福島第一原発の状況と事故処理の進展について、科学、工学、医学の知を駆使した調査が条件付きの五輪開催とするのです。それまでは、IOCは、選手たちが「安全な環境で競技が行える」と確信すべきではありません。

(日本語訳 野村初美)

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ありがた迷惑な科学 ー 国連特別報告者が福島の健康対策向上を勧告 素知らぬ顔の日本

「なぜ尿検査をしないのか?なぜ血液検査をしないのか?用心の上に用心を重ねようではないか。」

国連特別報告者アナンド・グローバー氏は2012年の福島訪問に続き、今年三月には東京で講演をし、福島の住民への健康調査が依然として不十分であることと、放射能に関する健康問題について述べました。

三年前の福島第一原発事故後間もない時期から、福島県中の医師たちが嚢胞や結節の異常、しこりから、放射能の影響として顕著な甲状腺癌の兆候の発見に当たってきました。異常として確認された数字には不安を抱きます。しかし、同時に不可解でもあるのです。大抵の場合、甲状腺癌は放射線被曝後5年くらいでようやく発症し始めるからです。

それでは、医師や衛生当局者たちは調査で得た情報をどうするつもりなのでしょうか。

情報や警告は結局のところ、日本にとってはありがた迷惑なのです。原発の再稼働と元は避難区域に指定されていた居住地への住民帰還を計画しているこの国にとって、放射線被曝の悪影響を挙げられては経済推進への妨げとなります。

そこで日本は、これらの施策が国民の最善の利益とはならないことが実証されにくいよう巧妙な措置を講じています。新しい情報や証拠をもたらしかねない学術研究を阻む二つの手段を用います。一つ目は資金カット、二つ目は研究者たちに秘密主義を課してマスコミへ情報を提供させないという手です。3月16日付のニューヨークタイムズ でデビッド・マクニール記者がこうした経緯を綴っています。サウス・カロライナ大学のティモシー・ムソー教授は三度の福島への調査訪問で「困難さ」を実感し、タイムズ紙上で次のように語っています。

「自主規制しているか、もしくは教授たちが余程慎重を期すよう上部から警告されているかは極めて明白です。」

「更に周到な規制は、国からの調査資金不足です。日本政府は除染作業には何兆円と投じても、環境調査にはほとんど費やしていません。」

アメリカの科学者ケン・ブッセラー氏も日本周辺の海洋を数回調査し、タイムズ紙で述べています。

「研究者たちはマスコミに対して口を閉ざすよう言われているか、または許可なしにしゃべることに抵抗があるのです。」震災後の日本に調査で三度訪れているブッセラー氏は、日本政府に対し、原発事故で放出されたセシウムやストロンチウムの食物連鎖への影響調査にもっと資金を投入してほしいと考えています。「どうして日本政府はそこにお金をかけないのでしょう。得るものは大きいというのに。」

もし、研究者たちが財政的な問題が足かせとなって身動きがとれないのであれば、日本政府に対して強い影響力や権力を有する国、組織が実質的かつ独立的な健康調査を行うよう求めるという選択肢もあります。

東京都は2020年夏季オリンピックの開催地です。オリンピックを主催・統括する団体として、東京に開催の勝利を与えた国際オリンピック委員会(IOC)の一番の心配は、福島の状況と現在も続いている数々の問題でした。安倍晋三首相は当時のIOC会長ジャック・ロゲ氏に直々に「福島は安全である」ことを保証しました。

ニューヨークタイムズ編集委員会が3月21日付の記事で明らかにしたように、 福島第一原発の事故処理の現状は「恥ずべき」もので、決して安全と言えるものではありません。更に、日本国内外の科学者たちが述べる通り、環境、科学、健康それぞれの面から状況を解明する調査が現在十分に行われておらず、安全を保証するどころの話ではありません。

今年始め、ヘレン・カルディコット博士がIOCのトーマス・バッハ会長(経歴)宛てに、東京オリンピックに出場する選手団の健康に関する懸念を八項目にまとめた手紙を送りました。博士は手紙を次のように結んでいます。

「以上の理由から、私は会長からIOCに対し、生物医学の専門家による独立調査団の編成を促すよう強く要請いたします。即ち原子力産業及び原子力規制・監督機関と金銭やその他の利害関係にないメンバーによって放射能の影響を受けた全地域を調査し、健康被害の広がりや程度を明らかにするのです。そしてこれが日本が意欲を燃やす2020年の東京オリンピック計画の本格化で手遅れとなる前に行われることです。加えて、福島第一原発の原子炉と建屋の予断を許さない現状、地下水問題、汚染水で満杯の膨大な数のタンクについて、調査団が理解し、報告することが必要不可欠です。

全文は下部に掲載しました。また、 PDFで閲覧可能です。以前にも述べましたが、オリンピック開催に当たって、福島を安全な脅威として扱う一番の方法は、日本、IOC、各国の科学者や工学者らが、任せて「安全」な存在になることです。そうして結成された組織が、福島の危機を軽減する策が全て示されているか、適切かつ適時に措置が取られているかを査定、承認します。これぞ金メダル級の評価に値する行動です。

カルディコット博士の手紙

2014123

トーマス・バッハ様

 

私は、内科医、小児科医として、福島第一原発事故によって放出された放射能汚染物質や放射線の医学的影響について精通しております。(私の経歴はhelencaldicott.comでご覧いただけます)

 

ここに一筆申し上げましたのは、2020年開催の東京オリンピックに出場する選手たちの健康に深い懸念を抱いたからです。

 

東京電力は、一日ごとに採取する汚染水のサンプルから60種以上の人工放射性物質を確認しています。その多くは、セシウム-137、ストロンチウム-90、ヨウ素-129など、核分裂が出現する以前の自然界には存在しなかった放射性物質です。つまり、この種の放射性物質の自然放射線として占める量はゼロです。ところが一旦放出されると危険な状態のまま数百年間自然環境に残留します。

 

私の懸念事項は以下の通りです。

 

1.   東京都の一部地域は福島第一原発事故による放射能汚染を受けています。アパート、建物の屋根に生えている苔、通りの土壌から無作為に集めたサンプルを検査したところ、高濃度の放射能が検出されています。調査結果参照のご要望があれば応じます。

 

2.   従って選手たちは、アルファ線、ベータ線やガンマ線といった放射能を出す放射性ちりを吸い込んで体に取り込んでしまう恐れがあります。汚染された道路上や土中からのガンマ線による(エックス線撮影のような)外部被曝についても同様に考えられます。

 

3.   東京の市場に並ぶ食品の多くは放射能に汚染されています。政府による奨励策で福島県産の食材が売られているためです。(食品中の放射性物質を味やにおいで感知することは不可能な上、全品検査も実際的ではありません。)

 

4.   日本の東方沖で獲られた魚の多くは放射能に汚染され、中にはかなり深刻な度合いのものもあります。この問題は現在も続いており、ほぼ三年間毎日、損壊した原子炉からは300400トンの汚染水が太平洋へと流れ込んでいます。

 

5.  汚染された食物や飲料を選手たちが摂取した場合、何年か後に癌や白血病を発症する可能性があります。こうした疾患の潜伏期間は、個々の放射性核種や罹患臓器によって異なりますが、五年から八十年です。

 

6.  日本政府は放射性廃棄物を焼却し、一部の焼却灰を東京湾に廃棄しています。そこはオリンピック選手たちが競技する会場です。

 

7.  もう一つ大きな心配の種は、これから2020年までの間に、福島第一原発から更に放射能汚染物質が放出される可能性です。原発3号機と4号機は地震とその後の爆発で激しく損傷。今後マグニチュード7以上の地震に襲われたら倒壊する危険性は増します。その場合、チェルノブイリの10倍もしくはそれ以上の放射性セシウムが空中に放出される可能性があります。東京は既存の汚染問題に追い打ちをかけられ、選手たちは大きな危険にさらされます。 

 

8.  福島第一原発には、1,000基を超える鋼製タンクが急きょ設置され、数100万ガロンの高濃度放射能汚染水を貯蔵し、更に1400トンの汚染水が汲み上げられています。未熟な作業員が設置したタンクがある上に、組み立てには、腐食したボルト、ゴム製シーリング材、プラスチックパイプ、粘着テープが使用されています。次に大きな地震が起きたら、多くのタンクは破裂し、大量の高濃度汚染水が東京からわずか北の太平洋に流れ込むことになります。

 

以上の理由から、私は会長からIOCに対し、生物医学の専門家による独立調査団の編成を促すよう強く要請いたします。即ち原子力産業及び原子力規制・監督機関と金銭やその他の利害関係にないメンバーによって放射能の影響を受けた全地域を調査し、健康被害の広がりや程度を明らかにするのです。そしてこれが日本が意欲を燃やす2020年の東京オリンピック計画の本格化で手遅れとなる前に行われることです。加えて、福島第一原発の原子炉と建屋の予断を許さない現状、地下水問題、汚染水で満杯の膨大な数のタンクについて、調査団が理解し、報告することが必要不可欠です。

 

敬具         

 

医学博士

王立オーストラレーシア内科医師会会員

ヘレン・カルディコット           

 

 

(日本語訳 野村初美)… Continue reading