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ハーバード、いかなる妙手で次代のリーダーにビジョンを仕込むか?

松村昭雄

じりじりと照りつける暑さの八月、多くの人が極上の休暇を過ごそうと動き出す時期です。中小企業の経営者や教師はもちろん、オバマ大統領も例外ではありません。学生、保護者、教師にとっては、新学期に突入する前の貴重な休みでもあります。

 シリア情勢 「JFK Jr. フォーラム」でシリア危機について討論するファラー・パンディス氏(米国務省イスラム世界担当特別代表を務めた後、ハーバード大学ケネディ・スクールInstitute of Politics のresident fellow )とニコラス・バーンズ氏(同大学ベルファー・センター Future of Diplomacy のDirector)               (写真提供 ハーバード・ケネディ・スクール)

シリア情勢「JFK Jr. フォーラム」でシリア危機について討論するファラー・パンディス氏(米国務省イスラム世界担当特別代表を務めた後、ハーバード大学ケネディ・スクールInstitute of Politics のresident fellow )とニコラス・バーンズ氏(同大学ベルファー・センター Future of Diplomacy のDirector)              (写真提供 ハーバード・ケネディ・スクール)

オックスフォード、モスクワ、京都、リオデジャネイロ、コンヤ(トルコ)、エルサレムと、各地で催されてきたグローバル・フォーラムで、私はたくさんの優秀な学生たちと共に活動する機会に恵まれました。彼らの新鮮なアイデアと力強いエネルギーのおかげで、各フォーラムでは一層の成果をあげることができました。2007年には、当時、タフツ大学の二年生だったクリス・コテに引き合わせてもらうという幸運に恵まれました。今では、このブログの管理から構想の練り上げまでを担う彼の貢献は、なくてはならないものです。来月から、クリスはハーバード・ケネディ・スクール・オブ・ガバメントで研究を始めます。そこには、たくさんの海外留学生もいるでしょう。エリート養成を目的とした政府の派遣留学生として、険しくも希望がもてる母国の未来への先導を託された学生たちです。

カリキュラムの範囲にとどまらず、未来のリーダーたちは、共に学ぶ中で醸成される理想主義から、何かを得るでしょう。学び舎で育まれた友情 ―クラスメートならではの信頼関係から生まれた― は、学生たちにとって、生涯を通じて支えてくれる、かけがえのない財産となります。つまり、制度的、階層的規範をしのぐ、目に見えないつながりです。しかし、友情からリーダーが生み出されるわけではありません。主体的に洞察できる力を養うことに時間を捧げた者だけが、今後数十年に待ち受ける難題に立ち向かっていけるのです。

そして、その難題は、計り知れないほど大きく、前例のないものでしょう。核兵器と、それが世界中の国々にもたらす多くの問題は、国家安全保障上の最優先事項となります。しかし、問題をさらに複雑にしているのは、イスラム国(ISIS)による支配地域の拡大、民族、宗教に起因するその他の紛争、不安定な地域における原子力発電所の増加、地球温暖化が及ぼす影響の深刻化です。旧来の秩序を踏み越え、人間の安全保障から、環境や世界金融の安全保障、さらには、それらの関連性に至るまで、問題の範囲は膨れ上がっているのです。私たちの従来の時間の感覚も超越しました。第二次世界大戦後、日本はわずか二十年で、戦後の荒廃から脱し、経済発展へと復興を遂げました。今や、核攻撃(現在の核爆弾の脅威は数十倍)、あるいは、原発事故(福島第一原発四号機の使用済み燃料プールの放射能は、広島の原爆の14000倍)によって、またたく間に膨大な範囲の土地が利用できなくなり、何百年間もその状態が続くことになりかねません。私たちが引き起こした気候変動も進行し続けており、同じことが言えます。

こうした問題に取り組むことができるリーダーや組織は、いまだ育っていません。現今の政策が、何千年先にも影響するかもしれない、などと1940年代にだれが考えたでしょうか?知覚しにくい時間というものの枠を越えて効力を保つ政策づくりには、異なった考え方ができるリーダーの養成が必要です。私たちの現在の行動は、将来世代に、子世代のみならず、ひ孫の世代に、どんな影響を及ぼすのでしょうか?私たちの責任とは?リーダーとして、人間としての責任とは何でしょう?

ハーバード大学は、教授陣の多岐にわたる専門分野、傑出した知的資源から、次世代のリーダーを養成する場として申し分ありません。ハーバード・ケネディ・スクールで最も意欲のある学生は間違いなく、在学中に、ロー・スクールやビジネス・スクールの素晴らしい資源を活用することになります。リーダーに必要な、深く、主体的な洞察力を特に養おうとする学生なら、思い切って、ハーバード・ディビニティ・スクール(神学系大学院)に一歩を踏み出してみてはどうでしょう。何百年、何千年を経た書物や歴史を時間をかけて学ぶ宗教指導者には、おのずと長期的なビジョンが身につきます。マネージメント、交渉、分析といった短期的スキルは、多くの国際的政治危機の回避に資するでしょう。しかし、私たちが必要としているのは、任期内にとどまらず、何世代先をも見据えて思考していけるリーダーです。.

次世代に向けた的確で大胆なビジョンを持つ、新鋭のリーダーとして台頭するのは誰か?かつてない対立を、先頭に立ってくぐり抜けていくためのビジョンを持つ学生たちを奨励することで、ハーバードも名実ともに先頭に立つことになるのです。

小説『 The Sanctity of Remembering

松村昭雄様

なぜ、私はこの小説を書いたのか?

 

Victims of the Nuclear Arms Race

Victims of the Nuclear Arms Race

小説『 The Sanctity of Remembering  』は、ナガサキとヒロシマの記憶をよみがえらせ、原子爆弾の使用にまつわる、相も変らない通説や誤認が重ねてきた現代史を洗い清めようと執筆しました。アメリカの人々の考えを一つずつ変えていきながら、この小説も形を成し、目的が定まって行きました。以前は耳にしなかった意見が、フィクションの世界で生み出される。真実を伝達するに最善の方法です。詩趣に富んだ散文からはどれも、非道な仕打ちや思いもよらない不幸からわき上がる切々たる響きが聞こえてきます。私も課せられた仕事にひたすら取り組み、書き、推敲し、助けが得られるその時まで続けていれば、その響きが聞こえてくるのだろう、と悟ったのです。私がこの小説を書いた理由はこうです。神の加護のもとにある一つの国家が、自由という理念によって打ち立てられたのであれば、その国家は永らえるだろう。そして、同じ神のもとにある一つの世界は、真に互いを理解しあうようになるだろう。このように考えたからでした。私が描いた登場人物たちは、この地球が抱えるあらゆることに、自分たちが知り得るかぎりの手段で立ち向かうことを余儀なくされています。すべてが一新されるまで、彼らは向き合い続けます。小説だけでしか信念を伝えられないのは残念ですが、作品としてはよいものに仕上がっています。そして、被爆69周年に際して、この本が完成しましたことを嬉しく思っております。私は、米陸軍兵士だった十代の頃、原爆によって四回被爆しました。従って、この作品は、原爆によって放射性降下物が生じるように、私の経験から生まれた副産物です。そして私は、国境を越えて真理を探究する者の立場に降り立ったのです。

 

ジョン・マッケイブ

 

『The Sanctity of Remembering』

ジョン・A・マッケイブ著*

二つの全く異なるストーリーがそれぞれに展開され、読者は、一体これらがどうやって交わるのか、と心待ちにせずにはいられない。広島の原爆投下で孤児となった、若い日本人女性レイコは、アメリカ人の修道女に育てられた。英語を身につけたおかげで、彼女は、1962年、アメリカ人の作家の秘書兼翻訳者の職に就くことができた。この作家は、もとはカトリック教会の司教であった。そして、長崎原爆の被爆者でもあった。

主人公のマクグラスは、典型的なアメリカ人の若者。親友のスポッツ・ダニエルズと共に陸軍に入隊する。1962年の夏、二人は疑念を抱くこともなく、砂漠への行軍に参加する。そこで、四回にわたる核爆弾の爆発で被爆する。この核爆発は、アメリカ政府による実験で、核兵器が使用される戦場での歩兵の状態を見定めることを目的としていた。核実験場での体験は、二人を生涯にわたって、肉体的、精神的にじわじわと苦しめ続けることになる。友達のダニエルズはついに白血病に侵される。彼は亡くなる前に自分たちの被爆と日本人の被爆とを比較し、学を深める。そして、レイコの雇い主である元司教と手紙を交わすようになった。

砂漠で真実があらわになったあの瞬間から、十六年の歳月が流れ、マクグラスは自分が目にした光景を明かし、「被爆者」とのつながりを感じていることを吐露し始めた。彼が仕事で日本へ出張した時のことだ。ダニエルズの妻が日本のマスコミに、彼が未解決の核問題と米政府に関する任務を帯びて来日したのだと、洩らしてしまう。おかげで、マクグラスの行く先々に、熱心な記者がずっと付いてまわることになる。マクグラスは、長崎に彼のガイド兼通訳として同行したレイコと知り合いになる。長崎市街を見て回り、ダニエルズの文通相手だった司教のロックス とも出会う。

マクグラスがロックスとレイコと共に純一な気持ちで始めた研究は、予期せぬ政治的関心を呼び起こすこととなる。戦時中の日本人の心にあったアメリカ人への嫌悪は衰えていなかったのだ。マクグラスは、狂信的行動に走る者に誘拐され、外部との連絡を遮断されたまま何週間も監禁される。一方で彼らはレイコを脅迫し、米政府に謝罪を要求させようとする。マクグラスを、プロパガンダを目的として日本へやってきたと思い込んでいたのだ。長崎で解放された時、マクグラスの人格は変わっていた。とてつもない災禍を目の当たりにし、出会った人、訪れた地に聖性を垣間見た彼が、どこかおかしくなってしまったように人は思った。

劇的場面は、元司教のロックスと最後に会うところである。その時マクグラスは、驚くほど、高潔さと健全な心をすっかりあらわにして見せる。二人だけが知る事実が明かされる。1945年8月9日、二人は不思議な体験をした。あり得ないことなのだが、マクグラスもロックスも、自分たちの体験が本物であることを知っている。そして、二人は、他人には非論理的にしか聞こえないような会話を交わしながら、追想していくのだった。

マクグラスは、妻と四人の友人を連れて、再び長崎と広島を訪れる。レイコと記者のナツメが案内役だ。レイコのおじのシロウは僧侶で、彼もまた被爆者だった。シロウは、マクグラスの一行に、危険が潜んでいることを忠告する。そしてそれは、予想だにしないタイミングで現実となる。東京に戻る途中、マクグラスらが乗るワゴン車にトラックがあからさまに追突してきたのだ。搬送された病院で、マクグラスは、かつて自分を誘拐した人物と出くわす。彼は誰が自分の敵なのか分からなくなり、混乱する。自身の被爆体験が、中国のスパイグループを刺激していたことを知るのだ。この諜報団は、米国原子力委員会との内密の取引が、マスコミに次第に大きく報道されることを恐れていた。新たな危機に、マクグラスは日本に滞在中、ずっと脅かされる。レイコとロックスもまた標的となり、安全のため国外へ移住する。マクグラスとナツメには、意外な筋からの保護がもたらされた。やっとのことで、無事帰国を果たしたマクグラスだが、生活はすさむ。だが様々な体験をしたことで、不思議と充実もしていた。真相が明らかになっていく中、マクグラスがおそろしい塵、そこに含まれるウラン、人が作り変えた死の放射体と直面する場面は圧巻だ。生きとし生けるものに投げかけられる善と悪の選択という途方もない難問から、マクグラスの思考はある言葉へとつながって行く。「暗闇の記憶はいつまでも続かない。いつかは忘れ去るものだから」そして、マクグラスは、まるで荒地を立ち去る者のように、突如、平凡な日常へと回帰していく。人類に授けられた新たな現実を待ち望む者の一人として。

*『The Sanctity of Remembering 』のあらすじについては、以下からのまとめです。… Continue reading

異常・奇形・適応 ― チェルノブイリと福島 放射能と野生生物に関する新研究から

親愛なる昭雄様 

この度、ウクライナ、ベラルーシ、日本を対象に行った私の研究概要、並びにこれら地域に関する研究の将来構想を皆様にご報告する機会をいただき、御礼申し上げます。私は、来年度に向け、多国間の協力態勢のさらなる強化、福島とチェルノブイリに関して現在行っている研究の継続、日本や各国の研究者と共同の新しい研究法実践のための支援の獲得を目標として掲げております。  

現在、こうした活動の総括や後援を担う中心的組織は他にありません。従って、私たちは放射能事故が自然集団に及ぼす影響を観察し、理解する大事な機会を逃している、と言えます。放射能事故とその他の環境中の放射能が、人間集団に与える長期的影響の予測を立てる上で必要不可欠であるのに、このままでは、将来、日本への居住、渡航についての危険度を評価しても、高い信頼性は得られないでしょう。 

ご多幸を祈って

サウス・カロライナ大学
博士
ティモシー・ムソー

突然変異した福島県のタンポポ (撮影 ティモシー・ムソー)

突然変異した福島県のタンポポ (撮影 ティモシー・ムソー)

チェルノブイリ+福島 リサーチ・イニシアティブ

ティモシー・ムソー博士

研究方針について

チェルノブイリ+福島リサーチ・イニシアティブ(CFRI)は、米国サウス・カロライナ州コロンビアのサウス・カロライナ大学が中心となり、2000年にウクライナ、2005年にベラルーシ、2011年7月には福島で正式な調査活動を開始した。現在までに、チェルノブイリで30回以上、福島で10回に及ぶ現地調査を行った。

チェルノブイリと福島、いずれの原発事故でも大量の放射性物質が放出された。常風による放射性物質の拡散で、チェルノブイリでは約200,000k㎡、福島では約15,000k㎡の範囲が高濃度に汚染された。どちらの地域も、放射性物質の広がりは均一ではなく、放射線量の「高」と「低」の地域が微細なモザイク状に点在していた。このつぎはぎ細工のような放射線量の分布状況をもとに、生体システムへの遺伝的、生態的、進化的影響について、調査を繰り返し、ある程度まで細密に探ることが可能だ。そして、そこから科学的に精度の高い検証結果が得られる。ともすれば、制限された不自然な環境条件になりがちな、実験室での研究や旧来の実地調査では成し得ない。この点は、重要だ。原発事故が生物に及ぼした影響の究明に、放射能汚染物質と環境要因の相関関係が重要な手がかりとなり得るからだ。このように、放射能汚染の影響は本来、環境を構成する諸要素を尺度に研究すべきである。一方、人間集団に関する研究だけは制約が多いため、放射能汚染の長期的影響を把握しようにも、限界が生じる。

サウス・カロライナ大学のチェルノブイリ+福島リサーチ・イニシアティブは、現在のところ、自由生息する自然個体群への環境面と健康面の影響について、幅広い専門分野から調査している、最初にして唯一の研究グループである。そのため、急性(短期的)被曝と慢性(長期的、複数世代にわたる)被曝の両方を調査していくことが可能だ。

チェルノブイリ+福島リサーチ・イニシアティブはまた、現在、チェルノブイリと福島の両地域を対象に調査を行っている唯一の研究チームである。

学術研究資金は主に、サミュエル・フリーマン・チャリティー基金、フランス国立科学研究センター、アメリカ国立科学財団、ナショナル・ジオグラフィック協会からの提供である。次いで、北大西洋条約機構(NATO)、アメリカ民生研究開発財団、(CRDF)、アメリカ国立衛生研究所(NIH)、キアゲン社(本社・ドイツ)、フルブライト記念財団、サウス・カロライナ大学研究事務局、ならびに教養学部、フィンランド・アカデミー、個人寄付によって支えられる。

これまでのところ、過去7年間を中心に、リサーチ・イニシアティブの研究から60以上の学術論文が発表されている( http://cricket.biol.sc.eduから閲覧可能)。そして、これらの研究が、『ニューヨーク・タイムズ』、『エコノミスト』、『ハーパーズ』、BBC、CNN、PBSニュース・アワーといった沢山の新聞やテレビで大きく報道された。

研究チームは、チェルノブイリと福島の原発事故による慢性的低線量被曝の影響を健康面と環境面から解明すべく、生態学、遺伝学、線量測定技術を率先して駆使してきた。また、鳥類、哺乳類、昆虫類の自然個体群の生態調査を反復的に行って、個体数を調べ、個体群統計学から影響を解析した。例えば、DNA塩基配列と遺伝毒性試験から、野生で暮らす個体への短期的、長期的な遺伝障害を調べる。また、野生動物に小型線量計を取り付け、放射性物質による鳥類、哺乳類への全身負荷を野外測定し、自然条件下で生きる動物が内部、外部被曝で受けた放射線量の正確な推定値を得る。最近では更に、チェルノブイリ原発事故の影響を受けたウクライナの住民(特に子供)を対象とした、疫学、および遺伝学研究にも乗り出した。

研究の主な結果が、2013年から2014年に発表された。その中で、チェルノブイリの高線量地域に生息する鳥類から、腫瘍、白内障、精子の異常の発見、そして福島では、生物多様性への影響が報告されている。また、興味深い事例として、鳥類の中に、体内の抗酸化物質量を変化させて、放射能に対する抵抗力をつけた可能性のある種が新たに発見、報告された。しかし、高濃度汚染地域に住む鳥のオスの多くは、無精子症である。最近では、チェルノブイリ、福島の両地域で、小型哺乳類の神経発達への影響も認められた。

チェルノブイリと福島では、事故後の経過年数が異なる。放射性核種の放出量と種類についても違いがあるが、検出される主な核種は、両地域とも、セシウム137である。

 

チェルノブイリ周辺で見つけたアオジ

チェルノブイリ周辺で見つけたアオジ

研究内容について… Continue reading

日本 安全性に重きを置いた画期的判決   ━ 後に続け、東京五輪

松村昭雄

日本の地方裁判所が関西電力大飯原発の原子炉2基について、同原発の地震に対する構造的欠陥を挙げて運転差し止めを命じました。福井地裁の判決内容について Mainichi Shimbunの社説から。

 「住民の生命や生活を守る人格権が憲法上最高の価値を持つ、と述べ、

 『原発の存在自体が憲法上容認できないというのが極論にすぎるとして

 も、具体的危険性が万が一でもあれば差し止めが認められるのは当然』

 と結論づけた。」

この判決が出る以前の日本政府は、法体制で経済強化と輸入の最小限化を後押しすることを決定していました。今回の司法判断は、原発に対する強い警告を発し、人と環境への安全性が貿易収支に優る、としたものです。

更に、Japan Times 上では、判決を次のように要約しています。

 福井地裁の判決で重視すべきは、最悪のシナリオを超える規模の地震は発

 生しないと科学的見地から想定することは本来的に不可能、と裁断した点

 だ。また、2005年以降、全国4つの原発で想定の地震動を超える地震が到

 来している、と指摘。この地震大国日本において、基準地震動を超える地

 震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しである、と

 判決で述べられた。

日本が判決を尊重して大飯原発の運転を停止するのか、あるいは再稼働を継続するのかはこれから見守っていかねばなりません。

日本のオピニオンリーダーたちが、国内総生産(GDP)を押し上げて国を活気づかせ、国民の士気を高めるには、2020年の東京五輪開催は不可欠である、と言うのをよく聞きます。しかしながら、福井地裁の判決のように、五輪を商機と捉えるよりも、世界で活躍するアスリートたちの安全性を確保することがより重要であると私は考えます。.

幸い、東京オリンピックを地球環境と人間の福祉から見て、出場選手たちの健康に懸念を示す観察者がいます。先回、私はヘレン・カルディコット博士が国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長に宛てた手紙 を紹介しました。手紙の中で、博士はIOCに対し、生物医学の専門家による独立調査団の招集を訴えました。

2014年5月16日、カルディコット博士は、IOCの副会長で、東京五輪調整委員会の委員長であるジョン・コーツ氏から公式回答を受け取りました。

 「IOCにとりまして、また東京五輪の準備状況を監督する調整委員会の

 委員長である私にとりましても、出場選手の健康と安全は最優先事項であ

 ります。東京五輪開催中、選手たちが確実に安全な環境で競技を行えるよ

 う最善を尽くすつもりでおりますので、ご安心ください…

 開催国日本からの回答で、日本が国民を守るために様々な重要対策を実

 施していることは明らかです…」

日本は、「放射能による健康リスクについては、関連省庁が広範囲から厳しい検査を行っている」と報告しています。… Continue reading

ありがた迷惑な科学 ー 国連特別報告者が福島の健康対策向上を勧告 素知らぬ顔の日本

「なぜ尿検査をしないのか?なぜ血液検査をしないのか?用心の上に用心を重ねようではないか。」

国連特別報告者アナンド・グローバー氏は2012年の福島訪問に続き、今年三月には東京で講演をし、福島の住民への健康調査が依然として不十分であることと、放射能に関する健康問題について述べました。

三年前の福島第一原発事故後間もない時期から、福島県中の医師たちが嚢胞や結節の異常、しこりから、放射能の影響として顕著な甲状腺癌の兆候の発見に当たってきました。異常として確認された数字には不安を抱きます。しかし、同時に不可解でもあるのです。大抵の場合、甲状腺癌は放射線被曝後5年くらいでようやく発症し始めるからです。

それでは、医師や衛生当局者たちは調査で得た情報をどうするつもりなのでしょうか。

情報や警告は結局のところ、日本にとってはありがた迷惑なのです。原発の再稼働と元は避難区域に指定されていた居住地への住民帰還を計画しているこの国にとって、放射線被曝の悪影響を挙げられては経済推進への妨げとなります。

そこで日本は、これらの施策が国民の最善の利益とはならないことが実証されにくいよう巧妙な措置を講じています。新しい情報や証拠をもたらしかねない学術研究を阻む二つの手段を用います。一つ目は資金カット、二つ目は研究者たちに秘密主義を課してマスコミへ情報を提供させないという手です。3月16日付のニューヨークタイムズ でデビッド・マクニール記者がこうした経緯を綴っています。サウス・カロライナ大学のティモシー・ムソー教授は三度の福島への調査訪問で「困難さ」を実感し、タイムズ紙上で次のように語っています。

「自主規制しているか、もしくは教授たちが余程慎重を期すよう上部から警告されているかは極めて明白です。」

「更に周到な規制は、国からの調査資金不足です。日本政府は除染作業には何兆円と投じても、環境調査にはほとんど費やしていません。」

アメリカの科学者ケン・ブッセラー氏も日本周辺の海洋を数回調査し、タイムズ紙で述べています。

「研究者たちはマスコミに対して口を閉ざすよう言われているか、または許可なしにしゃべることに抵抗があるのです。」震災後の日本に調査で三度訪れているブッセラー氏は、日本政府に対し、原発事故で放出されたセシウムやストロンチウムの食物連鎖への影響調査にもっと資金を投入してほしいと考えています。「どうして日本政府はそこにお金をかけないのでしょう。得るものは大きいというのに。」

もし、研究者たちが財政的な問題が足かせとなって身動きがとれないのであれば、日本政府に対して強い影響力や権力を有する国、組織が実質的かつ独立的な健康調査を行うよう求めるという選択肢もあります。

東京都は2020年夏季オリンピックの開催地です。オリンピックを主催・統括する団体として、東京に開催の勝利を与えた国際オリンピック委員会(IOC)の一番の心配は、福島の状況と現在も続いている数々の問題でした。安倍晋三首相は当時のIOC会長ジャック・ロゲ氏に直々に「福島は安全である」ことを保証しました。

ニューヨークタイムズ編集委員会が3月21日付の記事で明らかにしたように、 福島第一原発の事故処理の現状は「恥ずべき」もので、決して安全と言えるものではありません。更に、日本国内外の科学者たちが述べる通り、環境、科学、健康それぞれの面から状況を解明する調査が現在十分に行われておらず、安全を保証するどころの話ではありません。

今年始め、ヘレン・カルディコット博士がIOCのトーマス・バッハ会長(経歴)宛てに、東京オリンピックに出場する選手団の健康に関する懸念を八項目にまとめた手紙を送りました。博士は手紙を次のように結んでいます。

「以上の理由から、私は会長からIOCに対し、生物医学の専門家による独立調査団の編成を促すよう強く要請いたします。即ち原子力産業及び原子力規制・監督機関と金銭やその他の利害関係にないメンバーによって放射能の影響を受けた全地域を調査し、健康被害の広がりや程度を明らかにするのです。そしてこれが日本が意欲を燃やす2020年の東京オリンピック計画の本格化で手遅れとなる前に行われることです。加えて、福島第一原発の原子炉と建屋の予断を許さない現状、地下水問題、汚染水で満杯の膨大な数のタンクについて、調査団が理解し、報告することが必要不可欠です。

全文は下部に掲載しました。また、 PDFで閲覧可能です。以前にも述べましたが、オリンピック開催に当たって、福島を安全な脅威として扱う一番の方法は、日本、IOC、各国の科学者や工学者らが、任せて「安全」な存在になることです。そうして結成された組織が、福島の危機を軽減する策が全て示されているか、適切かつ適時に措置が取られているかを査定、承認します。これぞ金メダル級の評価に値する行動です。

カルディコット博士の手紙

2014年1月23日

トーマス・バッハ様

 

私は、内科医、小児科医として、福島第一原発事故によって放出された放射能汚染物質や放射線の医学的影響について精通しております。(私の経歴はhelencaldicott.comでご覧いただけます)

 

ここに一筆申し上げましたのは、2020年開催の東京オリンピックに出場する選手たちの健康に深い懸念を抱いたからです。

 

東京電力は、一日ごとに採取する汚染水のサンプルから60種以上の人工放射性物質を確認しています。その多くは、セシウム-137、ストロンチウム-90、ヨウ素-129など、核分裂が出現する以前の自然界には存在しなかった放射性物質です。つまり、この種の放射性物質の自然放射線として占める量はゼロです。ところが一旦放出されると危険な状態のまま数百年間自然環境に残留します。

 

私の懸念事項は以下の通りです。… Continue reading

揺らぐクーベルタンの理念 ━ 日本と国際オリンピック委員会

松村昭雄

ソチ五輪が閉幕し、皆さんの胸には何が残りましたか。デジタル技術を駆使したきらびやかな開会式?それともアイスホッケーの鮮やかなプレー?あるいは悲痛なスキーの転倒でしょうか?いずれにせよ、閉会式後には何億人もの人々が自国とその代表選手たちへの誇りを胸に、それぞれ選りすぐりの瞬間を心に留めていくのでしょう。何よりもオリンピックというものは、私たちを圧倒的な国際舞台へと手引きし、自国を誇る気持ちをかき立てます。

オリンピックの活動全体を統括する国際オリンピック委員会(IOC)は、二年ごとにこの驚異的な大会を盛りたてる責任を負っています。役割としては非常に分かりやすく、例えば「スポーツ倫理を普及するための促進と支援」、「選手の健康保護対策の促進と支援」などです。近代オリンピックの父ピエール・ド・クーベルタン男爵は人道主義者として名高く、競争と教育を用いた平和推進に関心を寄せていました。

『人生で重要なことは、成功ではなく努力であり、肝心なのは、勝利したかではなく、よく戦ったかである』

        -ピエール・ド・クーベルタン

 

最近数十年間のオリンピックは、それまでにはなかった絶頂とどん底を経験してきました。北京オリンピックの開会式といえば、勝利が思い浮かびます。爆破事件で死傷者が出たアトランタオリンピックは悲劇として思い起こします。テロの脅威はそれ以前からありましたが、大規模な国際的行事につきまとう脅威はかつてないほど大きくなり、2013年のボストンマラソンの爆破事件後では特に著しいようです。これまでの13年間でほとんどの国々がテロ対策を講じ、私たちも個々にテロの脅威を以前にも増して意識するようになっています。

2020年、東京で夏季オリンピックが開催されるその時、日本はさらなる脅威と向き合うことになります。安倍首相は、IOCのジャック・ロゲ前会長と委員たちを前に、日本の安全性を確約しました。首相は、福島に原発事故の災禍をもたらした大震災をくぐり抜け、日本の経済と国民の士気を五輪開催によって奮い立たせる旨を語りました。

 

五輪の開催が、希望をもたらし、経済を潤すことで国の復興に寄与するという点に異存はありません。しかし、依然として放射性廃棄物の処理と被曝に苦闘する福島県からほど遠からぬ地に、世界レベルの選手たちが一堂に会し、各国からの注目を浴びるのです。日本が一刻も早く事故を収束して選手団への健康被害を防ぐことは、IOCにとって最優先事項のはずです。

脅威には、 (1)テロのような暴力行為 と (2) 原発事故と放射線被曝がありますが、この二つは異なります。IOCは二つの脅威を切り離して考えるべきです。この点をもっと詳らかにするため、様々な分野の専門家の意見を探ってみました。

スコット・ジョーンズ博士Scott Jones, Ph.D.

退役海軍将校。核搭載機パイロットの資格を持つ。朝鮮戦争、ベトナム戦争に従軍。

触って確かめることのできる軍備と違って、音もにおいもなく、目にも見えない放射能から感覚刺激を受けることはない。戦闘に備えた事前配備のシミュレーションは危険なまでに現実味を帯びているが、いざ交戦始まり、死の脅威が迫った場合、リスクは報われる。数百キロ先の倒壊した原子炉から発生する放射能の脅威に対しては、徹底した頭脳戦への備えを要する。大きな精神的試練に立ち向かうための手段は、被曝の影響に関する科学的、医学的知識と、適切な措置、放射能レベルの告知、避難命令の実行責任者たる当局への信頼のみなのだ。こうした計画を策定し、公表しなければ、信頼構築のための重要な要素を欠くことになる。

ヘレン・カルディコット医学博士Dr. Helen Caldicott

 嚢胞性線維症が専門の小児科医。社会的責任を果たすための医師団(1985年にノーベル平和賞を受賞した団体の加盟組織)の創立者兼会長。2014年の始め、IOCのトーマス・バッハ会長と理事会のメンバーに手紙を書き、生物医学の専門家による独立チームを編成し、東京五輪についてリスク評価を行うよう訴えた。

東京都の一部地域は、三年前に起きた福島第一原発事故による放射能汚染を受けている。アパート、建物の屋根に生えている苔、通りの土壌から無作為に集めたサンプルの放射性物質を測定したところ、高濃度の放射能が検出された。従って、選手たちは、アルファ線、ベータ線やガンマ線といった放射線を出す放射性ちりを吸い込んで体に取り込んでしまう恐れがある。汚染された道路上や土中からのガンマ線による(レントゲン撮影に類似した)外部被曝についても同様に懸念される。

東京の市場に並ぶ食品の多くは放射能に汚染されている。政府による奨励策で福島県産の食材が売られているからだ。食品中の放射性物質を味やにおいで感知することは不可能な上、全品検査も実際的ではない。

 

ゴードン・エドワーズ博士Gordon Edwards, Ph.D.

 カナダ核責任連合代表。2006年核のない未来賞受賞。

福島の放射能汚染災害は、悪意ある人間が政治的動機から特定の目的を果たそうと工作した末の惨事ではない。また、起こるのか起こらないのか分からない未確定の危機ではなく、既に存在し、逃れられない現実の危機である。関わる人間には非衛生的な状況をつきつけられる。この危機を「勇敢に」軽視しても、将来の核災害抑止には何の役にも立たない。必要もないのに自分自身や家族を放射能汚染の危険にさらすのだとしたら、勇敢というよりむしろ無謀である。

基本的な疑問である。なぜ、人工の発癌性物質に侵されたと分かっている地で競技大会を開くことが是とされるのか。オリンピック事務局は、空気中のアスベスト濃度が高いと分かっている地へと入る算段をつけるつもりか。そこにいかなる道理があるのか。実際に正当な理由があるのならば、危険と利益を考量してみてはどうか。正当な理由がないのなら、百害あって一利なしである。

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原発オリンピック ━ 東京都知事選で問う危機とチャンス

松村昭雄

福島第一原発の事故以来、著名な科学者の方々による事故への見解を伝えてきましたところ、様々な分野の専門家から洞察に満ちたご意見が沢山寄せられました。また、大変ありがたいことに、フランス語、スペイン語、日本語、ドイツ語への翻訳を担当する皆さんの絶え間ない尽力で、何千人もの新しい読者を迎え入れられました。こうした共同作業によって国際的に高く信頼され、取り上げた問題が緊急対策を要するという然るべき認識を得られることとなりました。

これまでの三年間で、私は原子力発電と、それに伴う重大リスクが、一万年続く環境被害といういかに現実として受け入れ難いものであるか分かり始めてきました。

来月、日本国民に福島の安全性を問う機会が再び廻ってきます。2月9日の東京都知事選は世界中から注視され、論評がなされるでしょう。またこの選挙は、エネルギーという重要な争点を盛り込んでいます。候補者たちは既に、原発推進か反原発か立場表明をしています。

今回の都知事選が世界的に重要視されるのはなぜでしょうか。東京都が2020年の夏季オリンピックを取り仕切る栄誉と責任を負っているからです。

東京タワー

東京タワー

今後数週間かけて行われる選挙討論では、福島において現在進行中の危機、そして原子力発電の安全性について再び問われることから、東日本大震災と続く災害で学んだ教訓を再考してみることが役に立つでしょう。

  1. 極めて基本的な事柄が自明である。つまり、潜在的危険性のある機器は全て、運転を完全停止できる緊急停止スイッチを備えるべきであるのに、原子力発電炉にはそれがない。放射能の発生を止められないため、照射核燃料が原子炉の運転停止後も長期にわたって危険な量の熱を発生し続けることになるからだ。
  2. 原子力発電所は電力を生み出す一方、放射能汚染物質も大量生産する。汚染物質は発電所が運転を永久停止した後も何百年と危険性を残し、環境中への放出で長期間食物や水を汚染する。
  3. 損壊した原子炉の冷却水は放射能に汚染されながらも、冷却は継続を要する。そのため、汚染水は大量に増え、環境からの隔離が困難。特に地下水は深刻な事態にある。
  4. 日本には、照射核燃料を十万年間環境から安全に隔離しておける放射性廃棄物の保管場所がない。百年から二百年間、一時的に貯蔵できる仮の保管場所さえない。
  5. 日本は、福島第一原発の廃炉と燃料の取り出しを最低50年間では完了できない。この間、放射能は、大気や土壌、地下水に拡散し続け、汚染水は太平洋へと流れ込む。
  6. 原子力発電所が国家の安全保障問題を提起する存在であるため、政府は内部の作業状況を公の目から隠そうとする。そこには、公衆安全を脅かしかねない数々のミスや管理不行き届きが潜む。
  7. 甲状腺疾患、癌、白血病、遺伝子プールの損傷といった放射線被曝による健康被害の出現には数年かあるいは数十年かかる。じわじわと現れる放射線誘発疾患を社会は身を持って知ることとなる。
  8. 原発技術の未熟さ故、発展途上国への原発輸出は、より制御不能の核災害を引き起こす危険性が高い。偶発的原因のみならず、政情が不安定な地域での戦争やテロ攻撃も考えられる。
  9. 原子炉は全て、プルトニウムという人工原子も作り出す。プルトニウムは核爆発物の主要材料として、世界で核兵器製造に使われる。その上、地球上で最後の原子炉が廃炉になっても、プルトニウムはその後数万年間使用可能な状態で残り続ける。

以上九つの事実は、ここでは容易に理解していただけるでしょうが、過去三年間、技術者や官僚、そしてジャーナリストの多くが問題を謎に包んだまま、なおざりにしてきました。国民の懸念は増すばかりです。損傷した原子炉が発する放射能の封じ込めへの失策、甲状腺やその他の癌に侵された未知数の子供たち。その数は、五年か十年先になってようやく判明するのです。

時を同じくして、東京オリンピックの準備が進みます。オリンピックの主催に比類する栄誉など滅多にありません。莫大な資金とプライドが注ぎ込まれます。予算は80億ドル以上、そして国際評価が得られるかは円滑な運営にかかっています。五輪招致過程で国際オリンピック委員会(IOC)と日本が真っ先に心配したのは、安全性でした。即ち、福島の状況や放射能汚染の選手団や観客への影響です。日本はIOCの不安を晴らしました。IOCのジャック・ロゲ会長は日本に対してこう述べています。「あなた方は、自らを潔白であると表しました」。福島からの情報に従えば、結果は変わっていたに違いありません。このことが東京都知事選を通じてもっと真正面から議論されることを期待します。

オリンピック開催に当たって、福島を安全な脅威として扱う一番の方法は、「潔白」に日本、IOC、各国の科学者や工学者が加わることです。そうして結成された組織が、福島の危機軽減策が全て列挙されて、適切かつ適時に措置がとられているかを査定、承認するのです。これこそ金メダル級の評価に値するでしょう。

五人の候補者たちが東京都と1323万人の都民の統治を巡って競い合います。新都知事は、世紀に一度のポジションに就き、日本が新たな国際関係と新たなエネルギー政策を構築していくための一翼を担うことになります。理想として、特有の資質が求められます。長期的な視野、一流の外交的手腕、エネルギー政策への明確な理解、地方自治経験の持ち主であることです。以上の条件から鑑みると、首相や熊本県知事を歴任した細川護熙氏が他の候補者の間で抜きん出ています。

私は、東京オリンピックの成功を願っています。東京都民の皆さんも同様に、今後の危機のさなかにもチャンスを見出せるリーダーを信頼することで、オリンピック成功への望みを示すことができるでしょう。

(日本語訳:野村初美)

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原子力はインドの電力需要への解決手段となり得るか?

M.V.ラーマナー

 

M.V.ラーマナー   

M.V.ラーマナー

インド政府が日本との原子力協定締結に向けて交渉を進めている。協定が結ばれれば、インドは日本から原子炉関連の物資を輸入できるようになる。インドの原子力利用拡大計画の主たる論拠は、ただでさえ電力不足にあえいでいるところに、更に電力需要が急増しているという事情にある。

 

日印間協議の根底には、少なくとも三つの暗然たる現実が横たわる。第一に、おそらく最も胸に迫る現実として、日本は現在、国内の原発再稼働に対する国民の大きな反発に直面していながら、他国への原発輸出を検討している。その輸出先の国でもまた原子力への反対の声は大きい。特に、ウェスティングハウス・エレクトリックやゼネラル・エレクトリック、アレバといった企業から輸入する原子炉の設置用地として選定された現場はどこも反発が強い。理由は明白だ。2011年3月11日の東日本大震災以降、原発周辺に住む、あるいは原発建設予定地に住む人々は、福島の住民と同じような運命に苦しむ我が身を想像し得るし、現にしている。原発の立地場所は、何千人もの農業や漁業従事者を抱える地域でもある。そして、原発が自分たちの生活への重大な脅威であることを彼ら住民は極めて正しく見抜いている。インド政府は、住民の反発に対して、強制、収賄、宣伝工作を併せ用いることで対応してきた。従って、インド政府の原子力への取り組みを支持することは、民主的権利を尊重している行いと見なすことはできない。

第二の現実として、私が著書“The Power of Promise : Examining Nuclear Energy in India”で詳細に述べている通り、原子力エネルギーはインドの電力問題の解決策にはならないということがある。こう断言するのには多数の理由があり、失敗の前歴、低質なテクノロジーの選択、組織的学習の欠落が挙げられる。まずは、インドにおいて、現在の原子力による発電量はというと、原子力エネルギー計画が確立されて60年以上を経るが、わずか5,780MW(メガワット)と総発電量の約2.5パーセントを占めるにすぎない。楽観的に将来を予測したとしても、数十年で5パーセント以上伸びるという見込みは薄い。しかし、楽観は許されないのだ。インドの原子力省は、大胆な予測を長期に及んで立てきたが、実行に至っていない。原子力省では、高速増殖炉数百基を建設する計画もある。原子力導入初期の数十年間、増殖炉計画を推し進めた国は多かったが、実際のところ危険で不経済だということで、全ての国が計画を断念してしまった。インド原子力省は、世界各地の増殖炉技術に関する嘆かわしい過去から教訓を得ておらず、組織的学習の欠如を露呈している。対照的に、1990年代に本格的に始動したばかりの風力発電は、発電設備容量のみならず、配電網に供給される電力量単位(kWhs キロワット時)の数値から見ても、原子力を上回っている。

第三に、インド、また概して途上国とされる国々に必要なのは、資力に見合った安価な電力であり、この点から、原子力は高額であるため、こうした国々に適さない、という現実がある。石炭火力発電が原子力発電よりはるかに低コストであるインドの場合、このことは十分に実証されている。輸入の軽水炉にしろ、高速増殖炉にしろ、次世代原子炉は一層高額になるため、社会的弱者層にこうした電力は手が届かないであろう。原子力産業界が過去の経験から学び、建設費の低減を図るのでは、という期待もやはり何度も裏切られてきた。

 

おしまいに、一方でよく耳にする論議はどうなのか。原子力がインドの二酸化炭素排出量を大幅に削減し、気候変動の緩和に役立つ、という論である。まず、インドの政策立案者はこの件に関して、問題は原子力か化石燃料かではなく、原子力と化石燃料両方を念頭に置いた見方をしている。次に、原子力は、迅速かつ大規模に拡充しなければ、気候変動の大幅な緩和に効果を発揮しない。原子力の拡充を実現しても、他に見込みのある気候変動対策への資金を犠牲にして費やすのであれば尚更である。三つめに、その中央集権的特質と莫大なコストを伴う原子力は、人口大国インドが負うエネルギー需要問題の解決に大きく貢献することはできない。まして、環境に純利益をもたらす形でなどあり得ない。特に、気候変動への解決策として原子力を利用しようとすると、かえって二つの周知の問題が生じる。未だに解決できない、原子力エネルギーにつきものの問題、それは壊滅的な事故に対する脆弱性、数千年間にわたって人体への有害性を持続する放射性廃棄物の処理だ。

 

つまり、インドにおける原子力利用の拡大を支持する正当な理由はないのだ。日本の為政者は、インドとの原子力通商を始める際、この現実に向き合って検討すべきである。

 

 

M.V.ラーマナー

プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン公共政策大学院で科学および世界安全保障プログラムに携わる。著書にThe Power of Promise: Examining Nuclear Energy in India(Penguin 2012)がある。

 

 

(日本語訳:野村初美)… Continue reading

犠牲と宗教法 ― フクシマへの解決策

犠牲と宗教法 ― フクシマへの解決策

 

松村昭雄

 

 『そのわずかな持ち時間が、遂に政治キャリア史上で決定的とされ

   るスピーチとなり得るのか、安倍晋三首相は両手をゆっくりと

   胸の高さまで上げてから、自信のある素振りで左右に広げた。

 

   「私から保証をいたします」

   9月7日、首相はIOC委員に向かって演説した。

   「状況はコントロールされています」

 

   安倍首相は、ブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会総会で、東

   日本大震災の津波被害による福島第一原発の炉心溶融事故について、

   2020年の夏季オリンピックを東京で開催するに当たって懸念材料とはな

   らないと聴衆に強調。

   

   首相は述べた。

   「これまでも、そしてこれからも、原発事故が東京に被害を及ぼすこと

   はありません」』

          (ジャパンタイムズ Jun Hongoによる記事から引用

 

 

安倍首相の自信満々の態度は、なにも福島第一原発1~4号機の除染作業がだれ気味の現状に裏打ちされているわけではありません。実際、予想もしなかった機械的故障や作業ミスの多発には、情報についていくのもやっとです。“1リットル当たり40万ベクレル”とか、使用済み核燃料棒1,533体とかいった数字をどう理解すればよいのでしょう。それに、理解しようとしても、信頼できる情報が限られていては一層分かりにくくなります。正真正銘の独立評価で、水文学や機械工学、電気工学というように、幅広く技術的問題点を精査すれば、問題解決が図られるのでしょうが。

 

根本的疑問は相も変わりません。フクシマの行く末は?

 

クレムリン宮殿にて、シリアの最高法官クフタロー師、ゴルバチョフ大統領、松村昭雄

それでも演奏は続く・・・

スコット・ジョーンズ博士

 

豪華客船タイタニック号が大西洋の海底へと沈みゆくその船上で、楽隊は最期まで毅然と演奏を続けたという史実が残っている。この過ぎ去った歴史の一片を、2020年夏季五輪の東京開催決定後、日本が現在繰り広げているパフォーマンスとついだぶらせてしまう。「ショーは続けなければならない」とは劇界の訓示として、いみじくも言い得ているが、状況によってはとんでもない心得違いとなる。

尊い人命が失われたタイタニック号の悲劇がことのほか衝撃的であったのは、タイタニックは絶対に沈まない、と専門的に確証されていたことがある。今、フクシマから流れてくる調べは明らかに不気味だ。激しい損傷を負って傾ぎ、悶え苦しみながらゆっくりと崩れ落ちつつある福島第一原発4号機が奏でる響きである。ひとたび4号機が倒壊したら、使用済み核燃料プールを踏み轟かし、燃料棒を剥き出しにして、広島型原爆の1000倍超の核災害をもたらす。

かくして放射能地獄は地球全体に爪痕を残し、そこに生き残った人々は、日本という国を記憶に留めるだろう。その記憶は、相反して混在することになる。戦中における広島、長崎への原子爆弾投下による数多の犠牲者は、哀悼の念をもってしめやかに記憶されるだろう。翻って、東日本大震災後、国際支援の即時要請をせず、押し寄せる危機を阻止すべく適切な措置をとらなかった日本に哀れみの情は注がれない。

おそらく、国際社会はフクシマの悲劇から得た教訓を肝に銘じていくだろう。利益によって重要決定が左右され、規制の虜となって、危険性への警告無視、安全対策先送りを招いた挙句の果てを忘れまい。

もし、原発危機において世界トップレベルの技術者と科学者らが福島第一原発の事故処理に携わっていたら、不可避の結果を回避できていたのか、それは知る由もない。

2020年の東京オリンピック開催は叶わないだろう。東京、そして世界には別の前途が待ち受けている。

残念ながら、論点はもはや「何ができるか」ではなく、福島第一原発の事故と原子力産業に対して下される国際社会からの厳しい評価を受けるという最終段階を迎える。これは、将来世代の負担となって、人の手には負えないテクノロジーを相手に無謀なダンスを踊った我々に代わり、大きなツケを払わせることになろう。

スコット・ジョーンズ博士は、海軍将校を本職として、核兵器に精通。核搭載機操縦士資格を有する。諜報、核兵器配備担当。アメリカ欧米軍戦争計画のための核兵器攻撃目標付録文書を作成。その後、クレイボーン・ぺル上院議員の特別補佐官となる。

 

(日本語訳:野村初美)… Continue reading